受賞者紹介

第62回 社会貢献者表彰
しみんひろば ならおぐさ

NPO法人 市民ひろば なら小草

(奈良県)
NPO法人 市民ひろば なら小草 理事長 田村 隆幸
理事長 田村 隆幸

奈良市内の人権教育に取り組んできた小中学校の教員有志が、2007年から、夜間学級に学ぶ在日外国人とその子どもたちの学習や生活に関わる支援に取り組んでいた。2015年、国籍に関係なく、経済的困窮家庭の小中学生の子どもたちに無料学習塾をスタートさせると、現在は3教室までにひろがり、その運営は元教員、地域住民、大学生ボランティアによって支えられている。年間延べ1,300人以上の子どもたちが利用している。2017年に法人化。コロナ禍、不登校児童の急増に危機感を感じ、不登校の小中学生を対象に、公的援助を受けることなく、民間では初の、無料のフリースクールを2020年から開設。有料のフリースクールでは、経済的な事情で学びたくても学べない子どももいることから「すべての子どもに普通教育を受ける権利がある」として、元教員らが中心となり運営している。さらに高校進学後につまずきがあった高校生の居場所「優月アカデミー」は、長野県から認可を受けて、通信制さくら国際高等学校の奈良キャンパスとして2024年から開校。高校の教育課程のすべてを学べ、高卒認定試験も受験できる。さらに生きづらさを抱えた18歳以上が仕事や生き方を学べる居場所「歌姫庵」も新設した。すべての子どもたちが本来の自分を再発見し、自分らしく生きていける道を見つけられるように尽力している。

推薦者:架け橋 長島・奈良を結ぶ会 会長 稲葉 耕一

このたびは社会貢献者として賞をいただき、誠にありがとうございました。日頃はなかなか日の目を見ない活動で、なんとかその日その日を踏ん張って続けている活動ですのに、思いもかけぬ晴れやかな舞台での式典に参加させていただきました。社会貢献支援財団の皆様の温かいお心遣いに感謝申し上げます。なによりうれしかったのは、他の受賞団体の方々との交流です。今まで知らなかった活動に触れ、多くのことを学び、奈良に帰ってからも交流をすることができました。重ねてお礼を申し上げます。

私たちは今から17年前に、当時小中学校の教員たちの有志が、外国ルーツの子どもとその家族が社会において十分に理解されず孤立している状況を、見るに見かねて始めた自主的な教育活動でした。その中で学んだのは、日本語や母語学習など日本人が教えるという一方的な支援の立場ではなく、彼らから学んだり教えてもらったりすることでマイノリティーとの共生をめざした支援活動ができるということでした。その学びは、すぐさま次の活動に連鎖し、今度は国籍に関係なく学習支援をする「無料学習塾」を立ち上げました。「有料学習塾に行けない生徒のための無料学習塾」は、「貧困や格差」が子どもたちの学力にも大きな影響を与えていることを是正するための方法として、一人また一人と支援者が増え、結果的に現役の教員をしながらNPO法人格を取得することになりました。

さらにコロナ禍の2020年からは今大きな問題になっている不登校生児童や生徒の居場所や学びの場としてのフリースクールを立ち上げ、小中学生から高校生、そして若者の仕事支援まで、と活動は目の前の子どもたちの状況にあわせて広がり続けてきました。

今では「無料学習塾」は奈良県内の3か所に増え、フリースクールは「小草学園」として学校に居場所の少ない小中高校生の他、若者たちが集まってきます。

このように私たちは子どもたちの実態に合わせて、その都度活動の幅を広げてきたのですが、今回の受賞者の皆さん方に出会い、ご自身が当事者であったり、重大な社会課題を見つけられて、地に足の着いた活動を真摯に取り組んでおられ、感銘を受けました。

私たちもこれから先の10年後、20年後の姿に思いをはせ、今後は、人材育成にも力をいれ、1人でも多くの子どもの助けとなり、ひいては地域社会を経済格差のない、平和で自由な社会になるよう努力を重ねていく所存です。

  • 外国から渡日したマイノリティーが地域で孤立しないように「ルーツを中国に持つ子と親の会」を立ち上げ活動したのが、始まりでした。外国から来たお母さんたちがチームを組んで、子どもたちに故郷の言葉を学んでもらっています。日本社会ではマイノリティーである子どもたちも胸を張れる社会であることを願っています。
    外国から渡日したマイノリティーが地域で孤立しないように「ルーツを中国に持つ子と親の会」を立ち上げ活動したのが、始まりでした。外国から来たお母さんたちがチームを組んで、子どもたちに故郷の言葉を学んでもらっています。日本社会ではマイノリティーである子どもたちも胸を張れる社会であることを願っています。
  • 中国のふるさとの料理を日本人スタッフや子どもたちにも振舞ってくれる行事もあります。
    中国のふるさとの料理を日本人スタッフや子どもたちにも振舞ってくれる行事もあります。
  • 無料塾は2015年にこの大和郡山教室から始まりました。大学生が子どもたちの学習支援をしてくれます。
    無料塾は2015年にこの大和郡山教室から始まりました。大学生が子どもたちの学習支援をしてくれます。
  • これは無料塾の富雄南教室です。とくに地域の人が協力的で、場所も無料で提供してもらっています。学校からチラシを配ってもらうので、生徒にちゃんといきわたります。
    これは無料塾の富雄南教室です。とくに地域の人が協力的で、場所も無料で提供してもらっています。学校からチラシを配ってもらうので、生徒にちゃんといきわたります。
  • 不登校支援として無料のフリースクールを始めたのは2020年でした。学習遅れを心配する子どもたちにはしっかり学習支援もします。自分の居場所ができることによって、気持ちが落ち着くようです。
    不登校支援として無料のフリースクールを始めたのは2020年でした。学習遅れを心配する子どもたちにはしっかり学習支援もします。自分の居場所ができることによって、気持ちが落ち着くようです。
  • フリースクールで中学校を卒業しても高校に進学して躓く子もいることから、通信制高校の学習サポートをする「優月アカデミー」も活動を始めました。入学式ではみんなが暖かく迎えてくれました。
    フリースクールで中学校を卒業しても高校に進学して躓く子もいることから、通信制高校の学習サポートをする「優月アカデミー」も活動を始めました。入学式ではみんなが暖かく迎えてくれました。
  • 不登校の生徒にとって学習遅れは不安材料の一つです。誰かが躓いているとみんなで協力しながら問題の解決に向かっていきます。
    不登校の生徒にとって学習遅れは不安材料の一つです。誰かが躓いているとみんなで協力しながら問題の解決に向かっていきます。
  • 小草学園の仕上げは、高校生から生きづらい若者までの居場所「歌姫庵」です。高校を卒業したものの社会には出られない若者がしごとについて学びながら安心できる居場所として活動するため、歌姫庵にはミシンやコンピューターを準備しています。若者たちの斬新なアイデアが反映されると面白いです
    小草学園の仕上げは、高校生から生きづらい若者までの居場所「歌姫庵」です。高校を卒業したものの社会には出られない若者がしごとについて学びながら安心できる居場所として活動するため、歌姫庵にはミシンやコンピューターを準備しています。若者たちの斬新なアイデアが反映されると面白いです
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