受賞者紹介

第61回 社会貢献者表彰
ねったいしんりんほごだんたい

NPO法人 熱帯森林保護団体(RFJ)

(活動地)
NPO法人 熱帯森林保護団体(RFJ)代表 南 研子
代表 南 研子

アマゾンの森は大規模開発で破壊が進行しているが、そこに暮らす先住民族が自分たちで森を守っていく主体的な取り組みを支えたいと、南研子さんが設立した団体。ブラジルのマトグロッソ州とパラ州に掛かる18万平方km(日本の国土の約半分の面積)のシングー先住民国立公園と呼ばれる広大な地域で1989年から支援活動を行っている。南さんは1992年に初めて現地を訪れ、この32年間で識字教育(1994年〜2013年)植林(1997年〜2000年)女性自立支援(2000年〜2018年)水銀汚染調査、医療支援(1992年〜2013年、現在も必要に応じて継続中)伝統文化継承(1995年〜現在)など多岐に渡り支援事業を実施。また、集落内で貨幣制度は確立していないが、この数年で導入されることは必至であり、住民の経済的自立を促進するために養蜂事業も始めた。2014年からは、急速に進む開発や伐採と、乾燥化による大規模火災で加速度的に森が消失しており、森を火から守る消火防火支援事業を展開している。例えば2021年には1年間で13,235km²(東京ドーム28万個分)の森林が消えた。南さんたちの支援対象地域は、氷河期にも緑が残り種の避難場所となったことから、生物遺伝子資源の宝庫と呼ばれているが、いまだ調査は2%しかなされていない。一方、開発の影響で日々おびただしい数の生物が絶滅し、甚大な地球的規模の損失が危ぶまれる。地球上の酸素供給源であるアマゾンの森を守ることは人類の使命ともいえる。

ブラジルのマトグロッソ州とパラ州を流れるシングー川(アマゾン川の主要な支流)の上流域から中流域にかけて、先住民族保護区がまとまった広大なエリアが広がっているのですが、私たちはこの一帯でアマゾンの森を守るため1992年から先住民と共に活動しています。

これまで2,000日以上現地に滞在し、識字教育、植林、女性の自立支援、水銀汚染の調査や医療支援、伝統文化の継承など多岐にわたって行ってきましたが、現在、特に力を入れている活動が2つあります。

ひとつはアマゾンの森を火事から守る消火防火活動です。開発や伐採の影響で乾燥化が進み、毎年乾季になると森林火災が発生するようになりました。一度火災が起きると消火の術がなく問題となっていたのです。私たちが活動している地域では、森を知り尽くした先住民約150人に消防訓練を受けてもらい、消防団を結成しました。

8年間にわたる地道な防火パトロール活動と火災発生時に消防団員たちの迅速な消火活動のおかげで、大火事が発生せずに済んでいます。そのことがブラジル政府に評価され、この消防団員のうち直接RFJ主催の訓練を受けた15名が国の正式な消防士として認定され、そのうち7名はブラジル環境省の職員として1年間、森林の消防士として任務につくことになりました。小さなプロジェクトとして始めましたが、私たちの活動が“先住民による防火・消火活動”の先駆的なモデルケースとなり、より広範囲に及ぶ先住民居住地域に伝播・浸透しつつあります。

もう一つは養蜂事業です。先住民保護区では未だ貨幣が流通していませんが、ブラジル社会の価値観に従わざるをえず、貨幣経済の導入も余儀なくされることでしょう。大企業のシステムに飲み込まれ、安易な換金作物栽培を広範囲で行い、取り返しのつかない状態になった他の保護区の例もあり、この地を守る手段として、自然環境を維持再生し、かつ伝統文化にもとづき先住民の経済的自立をはかる唯一無二の対策として養蜂事業にたどり着きました。

2010年から、5集落を対象に養蜂の技術、採れた蜂蜜をブラジル社会の市場に流通、販売させるところまでの知識や技術を習得してもらうことを目的に、専門家を雇い、現地視察や講習会など地道な活動を行いました。

市場と流通の確保をするためにはブラジル社会における諸条件や規定をクリアする必要があるため、先住民らがその技術を身につけるために時間がかかりました。やっとのことで市場と流通の確保ができたところで、コロナ禍となり出荷が遅れましたが、2024年から市場を持ち、販売を開始するまでになりました。

「地球の肺」とも言われるアマゾンの熱帯林。私たちの生活と命を守ると共に次の世代に安全で持続可能な地球を引き継ぐためにも、かけがえのないアマゾンの森を守ることは私たちの務めだと考えて活動を続けています。

  • 開発で大規模に伐採されてしまったエリアがあちこちにある
    開発で大規模に伐採されてしまったエリアがあちこちにある
  • カヤポ族のリーダー メガロン、南さん、カヤポ族の長老 ラオーニ
    カヤポ族のリーダー メガロン、南さん、カヤポ族の長老 ラオーニ
  • ハチの巣箱
    ハチの巣箱
  • 経済自立に向けて養蜂を始めハチミツを採っています
    経済自立に向けて養蜂を始めハチミツを採っています
  • 乾燥化が進み山火事が発生しやすくなった
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  • 消防団の消火活動 乾季になると山火事が必ず起きている
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  • 頼もしく使命感をもった消防団員
    頼もしく使命感をもった消防団員
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