一般財団法人 日本熊森協会

こんこんと水が湧き出る森が消えるとき、すべての産業、都市が消える…
日本熊森協会は、クマをシンボルとして、奥山生態系保全と復元に取り組んでいる実践自然保護団体。日本を自然保護大国に、そしてクマの棲む豊かな森を次世代へ繋いでいくための活動を27年間続けている。かつての世界4大文明は、豊かな水環境に恵まれ繁栄したが、水源であり土壌を育む豊かな森を破壊したことによって荒廃の一途を辿り滅んでいった。森を残し、全生物と共存しなければ、人間も生き残れない。生きものに畏敬の念をもち、自然を大切に残してきた日本でも、戦後、自然林を伐採してのスギ・ヒノキの拡大造林政策を進めたことや、乱開発により、豊かな森は危機的な状況にある。そんな崩壊への流れを堰き止めようと、豊かな自然を遺すために、荒廃した人工林を生きものの棲める自然林への再生する活動、クマの棲む奥山を買い取って守るナショナル・トラスト、森林破壊の阻止、政策提言、環境教育などの実践活動を行っている。欧米と比べて日本では自然保護団体の存在が希薄な中、全国に29の支部があり、会員数は20,000人を超える。中山間地域に住む人たちとも良好な関係を築き“動物たちに帰れる森を、地元の人々に安心を”をスローガンに活動している。
この度は、すばらしい賞をいただき、当会の自然保護活動に光をあてていただいたことを心より感謝しています。
私たちの自然保護活動は、人間の環境破壊により絶滅へと追いやられる生きものたちに心を痛めた中学生たちの活動から生まれました。中学生たちは、クマなどの生きものたちのつくる豊かな水源の森が、人が豊かに生きるために不可欠で、文明を支える基盤だと気づき、1997年に、市民の力を集め、豊かな森を再生・保全し、次世代へと遺していくために、日本熊森協会が設立されました。その後、実践をする自然保護団体として、28年間に亘り、野生動物との共存や豊かな森の保全・再生の現場の最前線で奮闘してきました。
国土の3分の2が森林である日本ですが、戦後の拡大造林政策で自然林を伐採して植えたスギ・ヒノキの人工林が放置され深刻な荒廃を引き起こしているだけでなく、近年は地球温暖化などの影響により、わずかに残っている豊かな森の劣化が顕著です。それに追い打ちをかけるように、莫大な利益を狙った内外の投資家による、奥山の森林を大規模に破壊するメガソーラーや大規模風力発電施設建設を計画が乱立しており、日本の森林環境は悪化の一途をたどっています。当然、森に棲む生きものたちはますます追いつめられています。
たいへん厳しい状況で、このままでは次世代が豊かに生きるだけの自然を日本に遺してやれないのではないかと絶望的な気持ちになることもありますが、奥山が豊かであることの意義を誰よりも知る自然保護団体として、奥山で今何が起こっているのか、事実を伝え、たくさんの方々とつながることにより、本当に自然を守ることのできる、大きな活動に広げていきたいと思っています。
表彰式に参加をさせていただき、分野は違えど、自分のためではなく、支援が必要な方を支えるため、豊かな優しい社会をつくるために奔走されている他の受賞者のすばらしい活動にも感銘を受けました。活動は様々でも、その根底にある思いは共通するものもたくさんあることがわかり、同じ時に受賞をいただいたというご縁も大事にしたいと考えています。