NPO法人 のびの会

若い女性に多い摂食障害やパーソナリティ障害という心の病の回復と社会生活を目指し日本初のサポートグループ(当事者、家族らの自主的な活動を医療や福祉の専門家が支える)として1991年に活動を開始。インターネットや病院の紹介で、この会にたどり着いた当事者や家族にとって、回復には非常に長い時間がかかることとこうした組織が未だに少ないことから、生涯の拠り所となっている。1998年からスタートした地域活動支援センターミモザは、様々な心の病を持つ女性のための居場所兼リハビリテーション施設として、プログラムを通じて自分自身に向き合い、社会性を育み、一歩一歩の歩みに寄り添っている。また、家族会では、病院や周りに容易に相談できない悩みや苦悩を、親同士で語り合い、慰めあい、アドバイスし合い、泣き、笑い、それが明日に向かう原動力にもなっていて、心理士による相談事業も行われている。医療従事者と家族の支援により、自助グループだけではない、サポートグループの存在が、活動継続の大きな支えになっている。”回復の糸口は自分で探せる”をスローガンに、自主的な回復を支える活動を32年にわたり続けている。
この度は、このような大変栄誉ある社会貢献者の表彰をいただき、役職員一同、心より感謝申し上げます。
私たちが長年関わってきた、いわゆる拒食症(神経性やせ症)や過食症といった「摂食障害」は、心の問題から普通の食事が摂れなくなり、心身が蝕まれていく病気です。罹った人の半数は短期間で回復しますが、残りの半数は年単位で長引いて、学校や職場に行けなくなって自宅に引きこもったり、入退院を繰り返したり、時にはこの結果として、同世代の10倍の多さで、または自らの手で、若くして命を落としている実態はほぼ知られていないと思います。「ダイエットのし過ぎ」ではすまされない、まさに人生全てが左右されるほどのそんな深刻な病気への、「地域で良くなる場所を作る!」という挑戦は、今から約四半世紀前、その当事者と家族が、多くの医療者の「あり得ないだろう」論を押し切って始まったのでした。
振り返ると、開設当初は、摂食障害の当事者の『居場所兼リハビリテーション』と位置付けたデイケア施設と、家族が我が子の病気や関わり方を学ぶ場である家族会の二つが主な活動でした。最初は専門医をはじめとした医療スタッフが、嘱託としてこれらの活動に多く携わりましたが、長い年月の試行錯誤を繰り返しながら、運営スタッフの成長はもちろん、この作り上げた居場所を守り続ける責任を自覚できるほど当事者や家族が成長し、より生活に密着した体制になりました。
現在、従来の専門的サポートで個人の心の問題の解決も取り組みながら、デイケア部門は、ソーシャルスキルトレーニング、作業活動、リラクゼーション等の、社会生活を豊かにするプログラムを増やしています。家族会も、年単位で日々闘っている家族の意見交換が中心です。体重や食事の状況ばかり問われ、生物学的に「生かされる」場所ではなく、病気や障害があってもその人らしく社会的に「活きられる」場所に、と、今は摂食障害以外の、様々な病気や障害を抱える方全般にも、その間口は大きく広げられています。そして、この体得した変化と回復の可能性を言葉と行動で発信していく広報活動が、今の法人事業の大きな柱となっています。
今回の表彰は、これまでの多くの方々との出会いとご縁、そして命の灯を費やして創成期を支えてくれた先人達のたゆまぬ努力の結晶でいただきました。その感謝の思いを忘れることなく、私たちはこの先を目指して進んでいきたいと思っています。
心理療法士 武田 綾