NPO法人 親子の未来を支える会

生まれる前の胎児の命を多様に支えていける社会を目指し、2015年に設立され、胎児とその家族のサポート(病気の予防、ピアサポート、胎児治療・福祉との連携)を行っている。胎児診断により、病気や障がいが判明した際に、生む生まないの判断をする前に、胎児治療や、障がい児を出産後、同じような家族がどのように生活しているのかの情報を患者さんに伝えて、不安を抱えたまま相談する窓口もなく意思決定してしまう人がいないよう、より納得度の高い判断につながるようサポートしている。社会的サポート、ピアサポートや家族同士を繋ぎ、養子縁組へ繋ぐなど同時に並行して進めることで、どのような命も安全に温かく迎え入れられるよう願い、どのような価値観も否定せず、どのような判断もサポートする中立的な支援窓口として活動している。また、生まれてくる子どものきょうだいへのサポートや、祖父母の寄り添い方など、関わる人々への支援についても、それぞれブックレットにまとめてサポートしている。
この度は、名誉ある賞をいただけたこと、深く感謝申し上げます。このような機会を与えてくださった貴財団の皆さま、ご推薦下さいました日本ダウン症協会の玉井浩様、そして日々活動を共にしているスタッフの皆に、心から御礼申し上げます。
親子の未来を支える会は、誰もが病気や障がいを持つ可能性がある中で、特に妊娠中から、多様な価値観を尊重し合い、平等に社会参加できる社会を目指しています。妊娠は多くの喜びをもたらす一方で、身体的・精神的な負担や経済的な問題、パートナーとの関係性の変化など、多くの課題へ繋がることがあります。楽しみにしていたいつもの妊婦健診で、赤ちゃんの病気が突然告げられたとき、妊婦さんはもちろん、パートナーや赤ちゃんの祖父母にあたる方も、悩み、戸惑います。病名のみ告げられてどうしたらいいか困惑したり、周囲に相談できずに孤独感を感じることもあります。そんな方々の支えになる場所を知れる場所をつくりたいという想いで「胎児ホットライン」をスタートしました。
胎児ホットラインでは、医療機関でも当事者/家族会でもない第三者的な立場で妊娠中に相談に乗ることで、中立的な支援を行っています。ここでの「中立的」には、「価値観を否定しないこと」と「向かう先を指示(誘導)しないこと」という二つの意味が含まれます。大きな決断や混乱のとき、私たちの存在はユニークかつ不可欠なものと自負しています。一方、私たちが相談事業の中でできるのは、病気を治したり社会を大きく変えたりすることはなく、あくまでも生まれてきたあとの生活をできるだけ「見える化」することにすぎません。障害者支援や多胎児子育て支援など、さまざまな活動があってこそ、私たちは「社会にはこんな制度があるよ」と伝えられています。
この受賞を機に、世の中には多くの解決したい課題があることを知るとともに、おなかの子が生まれるこの世界にはたくさんの思いやりが溢れているということを改めて感じることができました。支援が不要になるほどに社会が成熟することを期待しつつ、全ての妊娠が思い通りにいかないことを心苦しいほど良く知っているからこそ、胎児ホットラインの需要がなくなることはないと考えています。改めまして、このような貴重な賞をいただけたことに感謝申し上げますとともに、これからも皆様と共に頑張って行ければと思います。