受賞者紹介

第61回 社会貢献者表彰
ホームドア

認定NPO法人 Homedoor

(大阪府)
認定NPO法人 Homedoor 理事長 川口 加奈
理事長 川口 加奈

自己責任論が強い日本社会では一度路上生活に陥るとそこから抜け出す手段が限られる中、誰もが何度でもやり直しができる、選択肢のある社会を目指し、川口加奈さんが19歳で設立した団体。中学2年の時、通学途中の車窓から炊き出しに並ぶホームレスの人たちを目にした川口さんは、この問題に関わるようになった。活動の柱は就労支援と住居の提供。2011年から開始した自転車のシェアサイクル「HUBchari」(ハブチャリ)は、大阪の社会課題でもある駐輪場満床を解消し、放置自転車を減らす事業で、ホームレス当事者を雇用、自転車修理や管理など、彼らが得意とする仕事を任せている。住居の提供は、18室個室の宿泊施設に加え、最近急増した10代、20代の若者や、困窮家庭、国籍や障がいなどの理由で暮らしが困難という相談者のニーズに応え、新たに24室個室の宿泊施設をオープンした。月1回行う夜回り活動では、大阪・北区周辺を4コースまわり、毎回85食のお弁当や支援物資を配布している。ホームレス状態から脱出し、再出発を後押しする社会の実現に日々取り組んでいる。

この度は栄誉ある賞をいただきまして、誠にありがとうございました。ホームレス問題というスポットの当たりにくい問題に対しても、こうして受賞の機会をいただきましたこと、社会貢献支援財団様の心意気を感じ、胸の熱くなる時間を過ごさせていただきました。改めて感謝申し上げます。

私は、14歳の時に、通学路で行われていたホームレスの人々への炊き出しに参加し大阪市内だけで年間213人が路上死していることを知りました。私はこの数字を聞くまで、心のどこかで「ホームレスの人は怠けている、楽だからホームレスをしている」と思っていました。しかし、年間200人以上も亡くなる路上生活。過酷でしんどいものであることに違いはない。ではなぜ、死ぬまで路上から抜け出せないのか。調べていくうちに、路上生活に陥ると、身分証や住所、携帯がなくなってしまい、自力では家や仕事を見つけられない負のスパイラルがあることに気づきました。また、家がないと生活保護は受けにくく、複数人部屋といった集団生活の支援施設に入所せざるを得ず、それなら路上生活でいいと諦めてしまっている人も多い状況がありました。

もう一度やり直したいと思ったら、誰もが何度でもやり直せる。そんな社会を作ることはできないだろうかと考え、私は19歳の時にHomedoorを設立しました。最初に、路上からでも働ける仕事を作ろうと考え、ホームレスの人の7割が得意とする自転車修理技術に着目し、シェアサイクル「HUBchari」(ハブチャリ)を開始。現在、大阪市内500拠点以上(ドコモ・バイクシェア拠点も含む)に広がり、年間数十万人が使うサービスへと進化しています。

さらに、行政の支援施設では共同生活であることに限界を感じ、寄付を原資に18部屋の個室型宿泊施設「アンドセンター」を開設。2021年には、「しんどい時こそ、最高のおもてなしをしたい」という思いから、アンドセンターの隣にカフェ「おかえりキッチン」もオープンしました。温かい食事が無料でいただけ、さらに、カフェでの就労体験もできる場になっています。

ここ数年、ホームレス問題にも変化が起きています。新規だけでも年間1000件近い相談が寄せられる中で、相談者の約半数が10〜30代と若年化が進んでいます。若者ホームレスの人の内、児童養護施設の出身者が10人に1人、被虐待経験者が4人に1人と、生育環境が要因で大人になっても困窮状態に陥っているという背景があることに気づきました。長期スパンで就労支援をする必要性を感じ、2023年には3億円の借金をして元ホテルの物件を購入し、新たに長期滞在をしながら就労支援を受けられる24部屋の個室宿泊施設「アンドベース」を開設しました。現在、全国から相談者が訪れるようになり、のべ6000人以上の相談にのってきました。

今回の受賞を励みに、あそこに行けばなんとかなる。そんな安心感をこれからも作っていけるよう、頑張ってまいります!

  • スタッフ集合写真
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  • 夜回り活動
    夜回り活動
  • 相談者と談笑
    相談者と談笑
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