受賞者

第51回

社会貢献の功績

もりぐち えみりお ひでゆき

森口 エミリオ 秀幸

(東京都)

南米ブラジルで言葉の壁から病院に通うことができない日系移住者を支え続ける、日系人の医師。森口氏の祖父が(故・細江静男氏)が1930年代に始め、その後、森口氏の父(森口幸雄氏91歳)が引き継ぎ、2007年からは3代目として森口氏が活動の中核を担っている。
毎年約3,000㎞以上の距離を移動しながら約1ヶ月かけて日系移住者を訪ね、無償で診察を行っている。診察のメインは日系Ⅰ世として暮らす60〜80代の人たち。長年、山奥の日系入植地で過してきたためポルトガル語が話せず、一般の病院での診察が受けられない状況にある人々である。
運用資金の多くを自己負担でまかなう厳しい状況が続くが、森口氏の活動は現地の日系移住者の人々の命綱となっている。

森口 エミリオ 秀幸

ブラジルで日本人永住者の巡回診療を行っております森口でございます。

このたびはこのような光栄な賞を社会貢献支援財団から授与いただき、心より御礼申し上げます。

今年は日本人のブラジルへの移民が1908年に始まってから110周年の年となり、ブラジル各地で記念の行事が盛大に行われています。現在では日本人移民の一世をはじめ2世3世と世代が進み6世も誕生していますが、それら日系人の数は190万人に達し、日本の次に日本人の多い国となっています。今一世の数は全日系人人口の12%、まだ20万人近くが健在で、多くの方は移民計画初期の頃に農業移民で渡伯し、慣れない環境の中、大変な苦労をされた方々がほとんどです。そんな中、多くの方はご自分は不自由をしながらも、お子さんにはしっかりとした教育を授け、そのおかげで日系人のブラジルでの信用は非常に高く、各分野で大勢の日系人が活躍しています。

私の祖父、細江静男がブラジルに移住した日本人、日系人への巡回診療を1930年に始めて90年近くが過ぎようとしています。祖父はブラジル全土の日本人移住地を回り、1975年に亡くなるまで日本人移住者たちの健康を守るためにその一生を捧げて尽くし、ブラジルのシュヴァイツァーとも呼ばれていました。子供のころサンパウロ近辺の巡回診療に何度か同行し、昼間は一人一人に心を砕く丁寧な診察、夜はその地域の人々を集めての教育講演と、地方の無医地区の日本人移住者のために頑張る逞しい祖父の姿が、私にとっての理想の医師像となりました。祖父が亡くなった後は、父、森口幸雄がブラジル南部(リオグランデ・ド・スール州、サンタ・カタリーナ州)の巡回診療を続け、私も10数年前から巡回診療医として仕事を引き継がせていただいております。

毎年、日本全土を越す面積を巡って、移住者の方たちの健康管理、疾患予防そして治療をという三大責任を背負い、現場で9割近くを解決しながらの毎年のボランティア行事です。今年も、計3500Km以上の距離を移動しながら、400人近くの患者さんたちを診察させていただきました。一世の移住者のほとんどは80歳近い高齢となられ、若いころは生活のため仕事に追われるあまり現地語であるポルトガル語を習うこともままならず、医者のポルトガル語による診察が受けられない、現地の医療機関にかかれない、という方が多くいらっしゃいます。また最近は出稼ぎ者の留守を守る孤老の方が多く、高齢者施設や介護サービスにまで行政の手が回らない当ブラジルにおいて、これらの高齢者の方が病気になった際のケアが大きな問題となりつつあります。これからはこの巡回診療を必要としている日系移住者の方たちの健康管理・疾患予防のみならず、それぞれの移住地で介護予防や介護のための教育・指導、それにかかわる人材の養成を、巡回診療の機会を利用し普及させていくことを考え実行に移す時が来ていると、痛感しています。近い将来に向けて、この巡回診療を「診療のための巡回診療」から「移住者の方々が人生の最後のときを幸せに過ごすことができるためのお手伝いの巡回診療」へ、と発展させていけたらというのが、私の巡回診療を通じての日系移住者の方々に寄せる思いです。

当然、巡回診療を行うのは私一人ではありません。毎年私と3000キロの行程を共にし、17に及ぶ移住地を訪れてくれるのは、日本から毎年ボランティアとして参加してくださっている横浜市大及び防衛医大の先生と学生の皆様、南日伯援護協会のスタッフやボランティアの方々です。また各植民地、特に僻地に在住なさっている永住者の方達を訪問するために欠かせない巡回診療バスを、草の根支援を通し提供してくださった日本国民の皆様、巡回診療実行ために必要な経費をクラウドファンディングを通しサポートしてくださっている皆様、JICA、各移住地で様々な形でお手伝いしてくださっている方々、そしてこれらすべてのサポートを取りまとめ、スケジュールの組み立てや各移住地への連絡から始まり、すべての手配を整えてくださる南日伯援護協会のスタッフの方々に、心より感謝申し上げます。

これからも、体の続く限り移住者の方々の健康管理に邁進したいと思います。