NPO法人 Piece of Syria
13年間続いた長い内戦で、未だ不安定な状況が続き、紛争地というイメージを払拭できないシリアで、避難した子どもたち、国内に残った子どもたちに教育支援を2016年から続けている。「Newsweek世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれた代表理事の中野貴行さんは「かつて、シリアの人々の国民性はとても心豊かなおもてなしの精神に溢れていて、かつ文化的でもあり、当時は日本よりも人気の観光地だった」と述べ、そんな本来のシリアを伝えることをミッションに、日本国内での講演を通じて発信している。長きにわたる紛争で多くの有形無形文化財を失うことから、復興に向けてシリア国民に並走するべく、避難先で子どもたちが忘れかけている母国語を学ぶ機会を提供し、避難生活で失われかけた社会性や集団行動を取り戻すため、現地でSAKURA幼稚園を開園し、シリアの未来を築くための若い力を育む活動や、失われつつある伝統的音楽や舞踊をデータ化して残す活動にも力を注いでいる。かつてのシリア人が、一番大切にしていた家族との時間を取り戻すことを願って活動を続けている。
このたびは、歴史ある社会貢献者表彰を賜り、誠にありがとうございます。
私たちPiece of Syriaは、シリアで教育支援を行う団体です。2016年に設立し、紛争下で教育の機会を失った子どもたちに学びの場を届ける活動を続けてきました。今、私がこうして代表として言葉を述べていますが、この活動の主役は私ではありません。10年以上続く戦争の中で、自らも深い傷を負いながら、それでも未来に希望を託して活動を続ける現地スタッフ。厳しい状況の中でも「学びたい」と学校に通う子どもたち。そして、長年にわたり私たちの活動を信じ、支えてくださった支援者や仲間たちの存在があってこそ、今日があります。
この活動の原点には、私自身の忘れられない出会いがあります。
私は戦争前の2008-10年、青年海外協力隊としてシリアで活動しました。当時のシリアは、医療や教育は無償で質も高く、人々は旅人を温かく迎えてくれる社会でした。そこで出会ったのが、活動先の村で一生懸命に手伝ってくれた12歳の少女です。彼女に将来の夢を尋ねると、「お金持ちになりたい」と答え、その理由として「お金は天国に持っていけないから、どう使うかが大事。子どもたちの夢を叶える学校を作りたい。そのために勉強して医者になりたい」と話してくれました。私は「きっとできるよ」と伝えました。すると彼女は、「あなたが夢をバカにせず応援してくれるから、夢を持てたのよ」と教えてくれました。いつか、この子が地域を、国を、あるいは世界を変えるかもしれない、とも思い、一人一人が持つ可能性を学びました。
しかし、私が日本に帰国した翌年、シリアで戦争が始まりました。人口の半分以上が避難生活を余儀なくされ、就学率は100%から6%へと急落。数年後、彼女が住む村の小学校が処刑場となりました。いても立ってもいられず、私はシリア周辺国・欧州を巡り、難民となった人々や支援団体の声を聞きました。その中で、「子どもたちの夢を叶える学校を作りたい」と語るシリア人青年と出会い、2016年から共に活動を始めました。
以来9年間、私たちは5万人以上の子どもたちに教育の機会を届けてきました。今年4月には15年ぶりにシリアを訪れることもできました。残念ながら、少女との再会は叶いませんでしたが、彼女の家族と再会し、「また帰ってくる」と約束しました。
一人ひとりの力は小さくとも、パズルのピースのように想いが重ね合わせれば、社会を変える大きな力になる。その信念から、私たちは団体を「Piece of Syria」と名付けました。今回の受賞は、これまでの歩みを認めていただいたと同時に、これからも活動を続けていく責任を改めて自覚する機会となりました。教育を通じて、子どもたちが生まれた場所によって未来を諦めなくてよい社会の実現を目指し、今後も一歩一歩、誠実に取り組んでまいります。
代表理事 中野 貴行
















