NPO法人 寺子屋方丈舎

1999年に設立された福島県会津若松市初のフリースクール。何らかの理由で学校へ行くのが難しい子どもたちに、約24年間に渡り、安心できる居場所と多様な学びの場を提供している。7歳から21歳ぐらいまでを対象としており、どの子も参加可能な、自然体験型の環境教育やこども食堂を市内2か所で開催し、子どもたちが学校外で人とつながる学びのコミュニティーづくりをしている。また、こども食堂に参加できない家庭には、食材の支援、こども宅食を月2回行ったり、学校に行けない子どもをもつ親同士の経験や悩みを共有する親の会も実施している。さらに5年前から鹿島学園高等学校(通信制)と提携。フリースクールに通いながら、高卒資格を取れるのは県内でここのみ。これまでに40名の子どもたちが通信制高校を卒業し、就職、進学の道へ進んだ。また郡山市では学校に行っていない子どもたちが600名近くおり、2020年に郡山市でもフリースクールをスタート、市外の子どもたちも通学している。設立から寺子屋方丈舎を巣立った子どもたちは220名以上、子どもの社会参画を支援し続け、未来のフリースクールのあり方を国へ提言する活動も行っている。
「民主的な学び」が社会を変えるために
いま日本は、空前の少子化の中で不登校が増えフリースクールやオルタナティブスクールで学ぶこどもたちが増え、10代の自殺が減らないという状況にあります。こどもたちは本当に幸せに、未来をつくる勇気を小さい頃から手に入れているのでしょうか?大人の都合で、ルールに縛られて、不安になったりしていないでしょうか?
公教育が「こども中心の学び」に変化していくまでに相当時間がかかることは容易に予想ができます。では、私たちに何ができるのか?これからも「楽しい学び」を実践していくことの繰り返しです。何かあの子たちは学校に行っていないけれど、楽しそうに見える。いつも笑っているよね。この姿が私たちの理想です。
生徒たちの学びは、教科学習からはじまり、旅やモノをづくり続けることにつながっていきます。自分たちが考えた学びの実践を積み重ねることができれば、それが幸せにつながると、私たちは信じています。
福島県の会津地域では、全国のどこにも先駆けて過疎高齢化の波が襲っています。課題の最先端にいます。多くの若者は10代後半になれば地域を出ていきます。しかし2割の若者は地域に残る。都市を選ばないこの若者が、もっと自信を持って地域に住み続けることができるような教育実践をしたいと考えています。本気の職業体験や、事業化。政策提案など、彼らができることがこれだけあることを、もっと学びの中に取り入れたいと考えています。
もはや都市では、大きな変化を作り出す「余裕」も若者への機会の提供も少なくなっています。私たちは、田舎だから実践できる学びとは何か?にもっとこだわりたいのです。そして、都市では得られない充実した日々。誰かに強制されることのない学びの時間を過ごしてもらえればいいと考えています。フリースクールとは何か?それは、課題の最先端で民主的に学び、考え行動し、失敗さえも喜びに変える場所になるところでありたいと思っています。
私たちは、この会津の地で育つ若者が、都市のために踏み台にされ、人材供給の場になるようなことだけは避けたいと考えています。空き家や空き店舗、耕作放棄地も財産です。楽しく活用して高齢者や障がい者まで大切な構成員となるコミュニティーの中で、こども・大人問わず学びつづける学習システムの中核にいたいと考えています。