受賞者紹介

第57回 社会貢献者表彰
 

NPO法人 ぱっぷす

(東京都)
NPO法人 ぱっぷす 代表理事 金尻 カズナ
代表理事 金尻 カズナ

主に性的搾取とデジタル性暴力(画像や映像を元にした性暴力)の被害に遭っている人たちの支援活動を行っている。2009年に女性支援の団体として啓発活動を開始、2012年にデジタル性暴力の被害相談を受けたことで、アウトリーチ活動と相談支援活動を本格化させた。新宿歌舞伎町でのアウトリーチでは主に若い女性に向けて啓発や情報提供を行う。潜在的な被害者を見つけ相談に繋がることもある。電話、ソーシャルメディアなどに相談窓口を設け、社会福祉士、保護司、心理カウンセラーを含む相談支援チームが専門の視点から相談者をサポートする。また、代表の金尻カズナさんを含むネットワークエンジニア・システムエンジニア主導のもと、インターネット上に拡散した性的画像や映像の削除要請、投稿者の特定、証拠保全などを行う「デジタル性暴力被害者支援センター」の運営も行っており、多言語スタッフが在籍していることで多言語での相談や海外ポルノサイトなどへの削除要請なども行うことが出来る。社会の仕組みを変える取り組みとして、学校などへの出前講座の開催や政策提言などのアドボカシー活動も行っている。

推薦者:小早川 明子

第57回社会貢献者として、NPO法人ぱっぷすの活動を表彰して頂きまして誠にありがとうございます。これまでぱっぷすの活動にご支援とご協力いただきました多くの皆様にも心より感謝を申し上げます。

私たちの活動は「ポルノ被害と性暴力を考える会」として2009年に始まりました。2017年にNPO法人化し、「性的搾取に終止符を打つ」というミッションを実現するためにさまざまな活動を行っています。具体的には、デジタル性暴力やAV業界・性産業などで受けた困りごとの相談支援、本人の意に反して拡散した性的画像を削除する活動、アウトリーチ活動、アドボカシー活動、広報・啓発活動などです。被害を受けられた方の意思を尊重し、刑事事件化できる場合は法執行機関と連携し被害回復に努めています。これらの活動を通じて、性的搾取の実態について調査し、社会に広く伝え、社会課題の解決を求める啓蒙活動を続けています。

ぱっぷすに寄せられる被害相談は年々増え続けており、2020年度は281件だった相談が2021年度には644件も寄せられました。 スマートフォンの加速度的な普及によって、子どもの頃からSNS機能の付いたアプリを利用することができます。それに伴って、SNSを用いた性的搾取・デジタル性暴力の被害は後を絶ちません。SNSを通じて言葉巧みに子ども・若年層に近づき、その罪悪感・孤立感・羞恥心などを利用して関係性をコントロールする行為を「グルーミング」と言います。イギリス・ドイツ・韓国など諸外国ではグルーミングは法律で規制されていますが、日本では法的な規制がほとんどなく、グルーミング行為は野放しの状況です。わいせつ目的で子どもを手なずけようとする人々にとって“声かけ放題”の状態が続いています。社会が抱えるデジタル性暴力・性的搾取の問題は深刻です。私たちと一緒に考え、声をあげ、行動するひとの輪を広げていきたいです。

2022年6月15日には「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」(AV出演被害防止・救済法)が成立、同月23日に施行しました。同法第3条1項において国はAV出演被害という性的搾取の問題について被害を認め、出演契約を無力化するルールが新しくできました。ぱっぷすでは、この法律を活用して被害を受けられた多くの方の回復に繋げる取り組みをはじめています。

ぱっぷすの活動は、活動に携わるスタッフ、関係する機関の皆さま、活動を応援してくださる個人・法人・助成団体の皆さまなど、多くの方々に支えられて成り立っています。厚く御礼を申し上げます。性的搾取・デジタル性暴力のない、より良い社会にしていくための活動に最大限取り組み、 日本の社会福祉の向上に寄与していく所存です。この度は、本当にありがとうございました。

代表理事 金尻 カズナ

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