受賞者紹介

第57回 社会貢献者表彰
えぬぴーおーほうじん だるくじょせいはうす

NPO法人 ダルク女性ハウス

(東京都)
NPO法人 ダルク女性ハウス 施設長 上岡陽江
施設長 上岡陽江

薬物依存症女性の回復と自立を支援する日本で最初の民間施設。1991年に上岡陽江さんをはじめ数名の回復者が設立した。当時、アルコール・薬物など依存症の回復支援施設には男性向けのプログラムしかなかったことを憂慮した上岡さんは「女性には女性に特化したプログラムが必要だ」と、回復とは単に薬物を止めるだけでなく、地域の中で安心して豊かに暮らせるようになることと考え、ミーティングを中心としたプログラム、また内職作業、布製品の製作を行う自立訓練施設・就労継続支援B型施設「フリッカ・ビーウーマン」、宿泊型のリハビリテーション施設「いこいの家」を通じて、精神・身体両面へのサポートと社会的自立への手助けを行う。薬物依存症の女性の多くは身体的、精神的に暴力被害を受け、心に傷を負っている。そうした女性たちのトラウマをやわらげ、女性たちが主体的に考え行動していけるように導く。生理・妊娠・出産・更年期の心身の変化や障がいを持ちながら子どもを育てることの困難さなど、女性特有のニーズにそった支援を切り開き実践している。

推薦者:日本アノレキシア・ブリミア協会(略称:NABA)

「スタッフの燃え尽きに配慮して施設運営をしていきたい、利用者の安全のために」

このたびは、社会貢献者表彰を賜りまして、誠にありがとうございました。長年苦労してきたスタッフたちと表彰の場に参加できたことを心から感謝しています。

ダルク女性ハウスは1991年に設立し今年で31年になる東京の下町にある女性の薬物・アルコール依存症のリハビリ施設です。私たちが一番大切にしているのは「安全」です。決して大きな施設は作りません。依存症の女性たちの80%が暴力の被害を受けています。支援として重要なのは「安全」という経験で、そのためにスタッフたちが長い時間をかけ伴走しています。

特に子育ての支援は暴力のない日常を味わったことがないメンバーたちに「ハラハラしない一日」を一緒に作っていくことです。子どもたちの進学やそのお祝い会を一緒に味わうこと、運動会に参加すること、お弁当を初めて作ること、保護者会に参加することしないこと、20歳の成人の日を祝うこと……などなど。

メンバーたちにとって普通の生活を一人で味わうことは結構大変なのです。選挙の赤い封筒をドキドキしながら一緒に開けて、立候補者のお知らせを辞書を使いながら読む。私たちはそんなことを今日もやりつつ、当たり前の毎日を過ごしています。

そしてとても大切なことですが、日常のなかで暴力は必ず起こります。ダルク女性ハウスの理事会はこの31年間、暴力に関して「すぐその日のうちに対応する」ことを第一の方針とし活動してきました。暴力を受けて逃げてきたメンバーが施設やその界隈で再度暴力に合わない、再現させない。D Vで逃げてきたメンバーがいたら、そのメンバーの安全を最優先にします。スタッフたちは、初めての面接でどんなに理屈に合わないことでも、必ずメンバーの訴えに耳を傾けます。自分達もメチャメチャな時に付き合ってもらった経験がありますから。そしてもし利用者が外部で暴力を受けたならば、すぐ理事に報告し夜には理事会の方針が決まり動いていきます。なぜなら被害を受けた人の手当、身体的な手当、精神的な手当は早ければ早いほどいいからです。加害側となる人たちにとっても早い対応が人生の再建を早めます。もう30年も一緒に活動しているので、理事たちも動く役割が決まっています。今まで一度だけ、被害者の利益をめぐって対立したこともありましたが、情報が少なかったためにきちんと判断ができていなかったことが後になって分かりました。

今年私は65歳になりました。まわりのスタッフたちや関係者にハラスメントしないことが今、一番の課題となりました。(難しい)

施設長 上岡 陽江

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