受賞者紹介

第54回 社会貢献者表彰
えぬぴーおーほうじん わーるどおーぷんはーと

NPO法人 World Open Heart

(宮城県)
NPO法人 World Open Heart 理事長 阿部 恭子
理事長 阿部 恭子

海外では犯罪加害者家族への支援が進んでいるが、日本は2004年犯罪被害者基本法の成立により、司法制度が大きく変わる一方、今も加害者家族にはほとんど焦点が当たっていない。厳しい社会の目にさらされ、引越、転校、転職、退職に追い込まれる加害者家族を支える団体を、代表の阿部恭子さんは、2008年日本で初めて設立した。
加害者家族は突然逮捕が知らされ、メディアスクラム、近所や親せきからの冷たい目にさらされ、学校や職場、家も追いやられる。同団体では、相談の電話を24時間体制で受け、これまでの相談件数はおよそ1,800件。殺人・放火・性犯罪等の重罪の場合が多く、その内4割が家族内での犯罪の為、家族は時に被害者であり加害者となる。逮捕された加害者に接見し、家族の現状や思いを伝えたり、加害者が家族にどんな感情を抱いているのかを伝えたりもする。
また、加害者家族だけではハードルの高い、被害者やご遺族への接触のアドバイスや謝罪に同行したり、退去を余儀なくされた住まいの転居先を探し、平均600万円といわれる賠償金や裁判費用等の為にも、家族が仕事を続けられるようにサポートし、その支援は加害者家族の気が済むまで続く。刑期を終えた際に迎える家族側の体制を整える事は、加害者に反省を促し、ひいては再犯を防ぎ、被害者へ償いを続ける環境を作ることに繋がると、団体は活動への理解を求める。

自ら罪を犯したわけではないにもかかわらず、ある日突然、家族が起こした事件によって日常は崩壊する。自宅を取り囲む報道陣、鳴りやまない電話、インターネット上には瞬く間に情報が拡散され、日本中を敵に回してしまったかのような恐怖が一家を襲う。これまで、どれだけの加害者家族が自ら命を絶つことになったのか、その数が定かではない。たとえ、家族が自殺に至っても、世間は自業自得だと言わんばかりに沈黙を貫いてきた。

日本において、もはや「タブー」とされてきた加害者家族支援。2008年、私はようやくその厚く重い扉を開いた。全国から寄せられる相談件数はまもなく2000件に達する。これまで決して焦点が当たることのなかった加害者家族の実態とは、どこにでもいるごく平凡な家族だった。

拙著『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)では、最も多く支援してきた殺人事件を中心に様々な状況にある加害者家族の実態を明らかにした。本書のタイトルは、活動紹介VTRで再現されたように、電話口の向こうで絞り出すような声で訴える相談者の声である。

ワールド“オープン”ハートと名乗っているものの、活動は“クローズド”にならざるを得ない。相談者である加害者家族の多くは、プライバシーの漏洩を最も怖れていることから、加害者家族と接するスタッフは、弁護士などの専門家らによって構成される少数のスタッフに限られる。そうしなければ、加害者家族が安心して悩みを打ち明けられる空間にはならないからである。リアルな加害者家族の声を多くの人に届けたい―、支援活動の意義を多くの人に理解してほしい―、しかし、実態の可視化には大きなハードルが存在している。

近年、「加害者家族」を主人公にしたテレビドラマや映画が話題となり、加害者家族の被害者性に焦点が当てられるようになったことは、加害者家族支援にとって追い風となっている。批判が起こることも当然であり、だからといってタブー視せず、社会で繰り返し議論しなければならない問題だと考えている。子どもがいじめの加害者と言われたら…、高齢の親が交通事故を起こしたら…、現実には、加害者家族とは、家族に属する限り避けられないリスクなのだ。

事件報道を見るとき、一瞬、想像して頂きたい。犯罪者もまた、人の子であり、人の親かもしれない―。

最後に、この度は栄誉ある賞を頂き心より感謝申し上げます。賞金は、親が起こした事件によって進学が困難な状況にある子どもたちの教育支援資金に活用させて頂きます。

貴重な機会を頂きまして、本当にありがとうございました。

理事長 阿部 恭子

  • 加害者家族相談会 名古屋某所
    加害者家族相談会 名古屋某所
  • 韓国の刑務所を視察
    韓国の刑務所を視察
  • 被害者団体 片山徒有氏と対談
    被害者団体 片山徒有氏と対談