受賞者紹介

第53回 社会貢献者表彰
ゆにばーさるえほんらいぶらりーゆにりーふ

ユニバーサル絵本ライブラリーUniLeaf

(神奈川県)
ユニバーサル絵本ライブラリーUniLeaf 代表 大下 利栄子
代表 大下 利栄子

目の不自由な子どもは、白い紙に点字が打たれた“絵のない絵本”を読むことが殆どで、その種類も少ないが、イギリスには誰でも楽しめるユニバーサルデザインの絵本が普及しており、日本では制作や普及させる担い手がいないと知った大下利栄子さんは「ユニバーサル絵本ライブラリーUniLeaf(ユニリーフ)」を2008年に設立。既存の絵本に透明の点字シートを挟んだ ユニバーサルデザインの絵本“UniLeaf Book”(ユニリーフ ブック)を作りを始めた。
ユニリーフブックは1冊1冊手づくりで、古本屋をまわり状態のいい既存の絵本を手に入れ、紙がささくれ立たないように1ページずつ丁寧に解体。そして、大型の業務用透明シートを絵本のサイズにカットし、点字用タイプライターで点字を打つ。解体した絵本と点字シートを再製本(リング製本)して完成。近年印字は機械化されたが、点字作成には細かいルールがあり、パソコンで編集した文章をそのまま点訳ソフトで変換するだけでは間違いが出てしまうこともあって、今でも試行錯誤している。
点字用の透明なシートは、硬さや厚みなど種類によって違いがあり、子どもの指で触って一番いい感触のシートにするなど、使う側への配慮は欠かさない。
ユニリーフブックは本年5月に1,000冊に到達。無料で月に1度、5冊ずつ27家庭・4学校等に定期的に貸出しているほか、不定期にも現在10家庭、4学校、視覚特別支援学校に貸出している。

市販の絵本を解体し、ページの大きさに切った透明プラスチックシートに本文を点字で打ち込み、見開き毎に挟み込んだ、日本唯一のユニバーサルデザイン絵本UniLeaf Booksを製作、視覚障害児のいる全国の家庭、学校に定期貸し出ししています。

20余年前、娘が失明し、初めて知らされた社会の抵抗感や特別視に打ちのめされました。分離せず、幼い頃から一緒にいるのが当たり前だったら、そんな「慣れ」が 「特別の」を 「普通の子」 にするのでは…そのために時と場を共有するツールが一つでも増えたらいい…。そんな願いを込めて、見える子と見えない子が一緒に楽しめる、英国発、透明点字シート付きユニバーサルデザイン絵本を一人作り始めました。英国から送られた1冊の本だけを頼りに、日本の資源で試行錯誤し11年後、手作り絵本は1,000冊を超え、利用者も協力者も全国に広がりました。真っ白の点字本を読む小さな我が子が自分の知らない遠い世界にいる・・そんな親御さんの悲しみを少しでもいやすことができたら嬉しいです。

この絵本は、子どもたちが一緒に楽しむためのみならず、共に生きる社会のシンボルとして、多くの方、特に若者に知っていただきたいと活動も続けています。県立逗子高校の授業や部活動での製作は10年となり、卒業後も続けてくれている子が現れました。近年は市民講座を開催、点字の仕組みを解説し、製作作業を体験しながら、皆で1冊作り全国に貸し出しています。イベント出展では絵本紹介の傍ら、点字に親しんでもらう企画が好評です。ヘレン・ケラーのいた米国マサチューセッツ州パーキンス盲学校の工房で作られる、数十年来変わらぬ希少点字タイプライターで名前を打ち、しおりを作ったり、娘の協力を得て、目と同じ速さで、手で、日本語と英語で、絵本を読むのを見てもらったり…人類の偉大な発明である「点字」を体感します。絵本もイベントも、それは当たり前のことと誰もが思うなら、活動はもはや不要です。そんな日を夢見て、その日まで続けていきたいと思います。

この度は、数少ない目の不自由な子どもたちのための、身の丈の小さな活動にお目を留めてくださり大変光栄に存じます。受賞を機に、ますます多くの方に絵本を知っていただけましたら二重の喜びです。身に余る栄誉を本当に有難うございました。

代表 大下 利栄子

  • ユニリーフブック
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  • ユニバーサル絵本製作講座
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  • 定例作業会
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  • 書庫兼作業場
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  • 横浜山手西洋館絵本フェスティバル出展・ワークショップ
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  • 県立逗子高校総合学習点字絵本製作
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受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」