受賞者紹介

第52回 社会貢献者表彰
すがの まさみ すがの なおこ

菅野 正巳・菅野 直子

(北海道)
菅野 正巳 菅野 直子

シマフクロウという翼を広げると180cmにもなる日本最大のフクロウを保護する活動を夫妻で行っている。シマフクロウは絶滅の恐れが最も高い絶滅危惧A類に指定されていて、北海道東部、サハリン、千島列島南部だけに生息しており、道内ではおよそ160羽いると推定されている。
1992年に東京から北海道に移住し、シマフクロウの調査を行って任意団体「シマフクロウを増やす会」を結成し保護活動を行ってきた。
2008年にNPO法人シマフクロウ・エイドを設立し、シマフクロウが生息できるように生態を保ちながら保護するという難題を試行錯誤しながら給餌活動、モニタリング、植林、パトロール活動を行っている。またこうした保護活動が人間の住む環境をも守ることを訴え、次世代を担う地域の子どもたちへ環境教育や講演会などの啓発活動を行っている。

推薦者:田中 元介

この度は、私たちの活動に光を当てていただき感謝申し上げます。そもそも菅野正巳がシマフクロウの保護活動に関わることになったのは、偶然出会った1冊のロシアの紀行文「ビキン川にシマフクロウを追って」でした。当時のロシアの豊かな自然や野生生物の生き生きとした様子に魅かれ一気に読み、文末には、シマフクロウは日本の北海道にもいると書かれてあり、ぜひ会ってみたいと強く思いました。その後、休暇を利用して北海道の東部を訪ねるようになり、やがてその存在が大きくなり移住するまでに至りました。現地の研究者を訪ね、浜中町はまだ調査がされていないから、ぜひやってみるといいとアドバイスをもらい、地図を片手に森を歩く日々が始まりました。情報は全くない時代でした。三か月後、出会いはいきなりやってきました。目の前の樹にとまっているシマフクロウの姿は、何か直視をしてはいけないような神々しさがあったことを昨日のように覚えています。先住民が村を守る神様として崇めていたことは後に知りました。記録用に撮った写真はブレていましたがとても気に入っています。

誰かに案内されてではなく、自分で試行錯誤しながら森を歩き続けた結果出会った、このことが、現在の活動の原点となっています。シマフクロウは、カメラマンやガイドに人気の鳥であるため、生息地保護のため長年情報が一般公開されず、保護の担い手育成も進まない状況がありました。このことを危惧するようになった頃から、私も活動に関わるようになり、今後多様な人が関与していくであろう生息環境の保全についても気になるようになりました。私は以前東京都の国定公園内の施設で自然に親しみ行動する人づくりを進めるインタープリター(通訳者)の仕事をしていました。普及啓発がシマフクロウ保護業界に不足していました。特に関係地域への啓発が重要だと考え、地域にフォーカスした活動を展開すべくNPO法人シマフクロウ・エイドを設立しました。一次産業の基盤となる「環境」を住民主体で持続的に保全し循環するモデルを作り、他地域へ波及していくことを目標にしています。NPO活動は11年目となり子どもたちの学習を通じ大人が変わりつつあります。シマフクロウはじめ全てのものにプラスに働く仕組みを今後も一歩一歩進め、みんなで守ってきた、としていきます。

この度の受賞で、他の受賞者様の活動を拝見し交流する機会をいただきまして、異なる活動の中に地球に生きるものとして共通する信念のようなものを感じました。自団体の活動に活かしてみようと思う発見もありました。この度は本当にありがとうございました。

菅野 直子

  • シマフクロウを指標とした出前授業(室内)
    シマフクロウを指標とした出前授業(室内)
  • シマフクロウを指標とした出前授業(野外)
    シマフクロウを指標とした出前授業(野外)
  • 観察を続けるシマフクロウ雄成鳥
    観察を続けるシマフクロウ雄成鳥
  • 生息地パトロール
    生息地パトロール
  • 給餌用活魚の防御対策
    給餌用活魚の防御対策
  • モニタリング調査取り纏め作業
    モニタリング調査取り纏め作業
受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」