受賞者

第50回

人命救助の功績

おばた しょういち

小畑 省一

(岩手県)
しょうじ よしあき

小路 義秋

(岩手県)

2016年8月30日20時頃、台風10号の大雨により、岩手県久慈市大川目町滝集落の近くを流れる長内川の氾濫と停電により民家が孤立する中で、小畑氏と小路氏は、濁流・流木の中を胸まで浸かりながら一人暮らしの高齢者宅を回り、状況に応じてロープやはしごを使ったり、背負うなどをして3人を救出するとともに3人を避難誘導し、救出した。

小畑 省一
小畑 省一
19時30分頃濁流に囲まれていた一人暮らしの81歳の女性をはしごを使って2階から救出した
19時30分頃濁流に囲まれていた一人暮らしの81歳の女性をはしごを使って2階から救出した

東北の太平洋側から台風10号が初上陸する可能性が大きくなり、前夜から続く大雨が午後5時頃には小康状態となったので、心のどこかにちょっと安堵の気持ちで夕食を取っていると停電しました。携帯型電灯とロウソクで光を確保しました。

直後、ドンドンドンと玄関ドアを叩く音と屋外から電灯を照らす光が見え、とっさに「何かが?」と胸騒ぎし玄関に走って行きました。

地域は東西南北が小高い山に囲まれ、夜は星空がくっきり美しく観察でき、世帯数約40余り、地域の中央を水深50cm川幅15m程の長内川が流れるのどかな限界集落で、停電の暗闇ではライトがないと周辺が何も確認できません。

玄関に知人が雨合羽と懐中電灯を手にやや興奮状態で現れ「河川近くのOさん宅が1m以上の濁流に囲まれている」と言うので、準備していた雨合羽を着てヘッドランプを装着して外に飛び出しました。

30m程歩くと、夕刻には水深が4m程だった川がゆうに10mに増水し、川幅は15mから50mほどに拡がり、真っ黒く勢いのある濁流と根こそぎされた10m以上もある流木が見えました。激しい金属音や木材の鈍く追突する音が聞こえ、緊張感や悪寒を感じ恐怖を覚えました。

私はちょっとの間があってから、犠牲者を出してはいけないとの思いで、同行していた妻に、足に障害ある90才のお婆さんを自宅に誘導するよう依頼し、小路氏と合流して1m以上の濁流に囲まれていたOさん宅へ向かいました。Oさんからこのまま自宅に留まりたいとのお話も有りましたが「命」あってだからと伝え、2階に梯子を掛け脱出してもらいました。後日、小母さんからお礼の言葉と濁流を見た恐怖や梯子の強度への不安を聞き、心に寄り添えなかったと反省もしました。

次いで、遠方で数名がライトを照らす様子が見え、厳しい状況判断でしたが小路氏が命綱で安全確保し、緊急対応を依頼、連携しながら激流を20m横断して救出に成功しました。

直後、1.5mほどの濁流に囲まれた平屋建てに「お婆さんが居るはず」の声が上がり、近くの電柱にロープを結び、自宅裏の窓から脱出させロープで背負い濁流と軟弱な畑地を一歩一歩進み無事救出しました。地域の2/3が水害による被害を受けながらも人的被害がなかったことに翌日安堵しました。

人命救助の功績の問合わせを頂いた時、地域で子どもの頃から見守られ育てられた思いと数年前にUターンした小路さんと私は「少しは地域に役立ったのかも」と思い、甚だ恐縮なお話だと思いました。

表彰式典では人命救助の受賞の方々の多くは家族とともに出席されており、理解され支えられている様子を感じ嬉しく思いました。皆さんの決断が素晴らしく、行動に感銘を受けました。

社会貢献での受賞の方々の長きボランティア活動や国内だけでなく国外の人々のためそれぞれの人生をかけた活動に心から敬意と感謝を申し上げます。ご功績の内容を伺い感銘を受けることばかりで勉強させて頂きました。これからは皆さんの活動や取組みを今後の生活、人生で係わる機会において多くの人に伝えることできたらと心に誓いました。

小畑 省一、小路 義秋

  • 翌日の被害状況。橋の上に水流と流木が確認できる
    翌日の被害状況。橋の上に水流と流木が確認できる
  • 写真中央のオレンジの家屋からひとり暮らしの80歳の女性を救出。付近の茶色の家屋から65歳の女性を救出した
    写真中央のオレンジの家屋からひとり暮らしの80歳の女性を救出。付近の茶色の家屋から65歳の女性を救出した
  • 右側は小路さんの自宅
    右側は小路さんの自宅