男の介護教室
ある日突然、男性が家族の介護に関わることになったら。超高齢化社会の日本の在宅介護者の性別割合では35%*が男性だという。男性は育児や家事の経験や地域社会との関わりが少なく、さらに家庭内の悩みを誰かと話すことに抵抗があり、孤立に陥りやすい。結果、要介護者への暴力やひいては殺人にいたるケースも。そんな男性の孤独を防ぎ、仲間と交流しながら、相談の場を提供しているのが、男の介護教室。代表で、歯科医の河瀬聡一朗さんは、重度の摂食嚥下障がいを持つ妻と妻を介護している夫が受診した際、夫の介護についての話を聴く中で、男性が集い、介護について学べる場が必要と感じ、2014年、宮城県石巻市で医科の医師、ケアマネージャーや栄養士ら11名と立ち上げた。教室には介護について学びたい男性、介護中の男性、家族を看取った男性らが集まった。参加者、スタッフが共通の「男技」エプロンを着用する。講義にはじまり、実習、調理、試食という流れ。実習では介護についての一般的な内容のほか、特に食べることについて重点を置いている。他にも介護サービスの利用法、死に関する講義なども行う。介護者を支援する活動が話題を呼び、現在全国に20教室を展開。参加後、怒鳴らなくなった、後片付けをするようになった、明るくなったなど、家族から好評を得ており、リピーターも90%以上と地域の介護者を支えている。
* 厚生労働省2019年国民生活基礎調査より
はじめに、この度はこのような名誉ある賞を頂戴し、大変光栄に存じます。共に活動を続けてきた仲間たち、「男の介護教室」を支え応援してくださっている皆様、私を推薦してくださった方、そして社会貢献支援財団の皆様に、心より感謝申し上げます。
「男の介護教室」は、2014年に宮城県石巻市で発足しました。きっかけは、私が勤務している歯科診療所を訪れた、あるご夫婦との出会いでした。
奥様はパーキンソン病による摂食嚥下障害で、食事を飲み込むことが難しくなっていました。ご主人は、慣れないながらも、食事の準備から介助、身の回りのケアまで一生懸命にこなしていました。
「介護で一番大変なことは何ですか?」とお尋ねしたところ、ご主人は迷わず「食事です」と答えられました。その言葉をきっかけに、“食”に関わる歯科医師として、同じように孤軍奮闘する男性介護者の力になりたいと考え、仲間とともに「男の介護教室」を立ち上げました。
教室では、「男技」と書かれたエプロンを全員が身に着け、講義や調理実習に参加していただきます。介護に必要な知識や技術を学ぶとともに、特に「食べること」「生きること」に直結する内容を重視しています。
おかげさまで、この活動は全国に広がり、メディアでも多く取り上げていただけるようになりました。
しかし、今も全国には、慣れない介護に懸命に向き合う男性介護者が大勢いらっしゃいます。厚生労働省の調査によると、在宅介護者の約3人に1人は男性です。残念ながら、介護の負担から心身ともに追い詰められ、要介護者に暴力を振るってしまう、あるいは命を奪ってしまうという痛ましい事件も後を絶ちません。
私たちは今後も、男性介護者とその課題に真摯に向き合い、少しでも悲しい出来事を減らせるよう活動を続けてまいります。
最後に、国の施策についても触れたいと思います。現在、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで送るための「地域包括ケアシステム」が整備されていますが、この仕組みは要介護者を支えることに重点が置かれており、介護者へのサポートまでは十分ではありません。介護者が疲弊すれば、要介護者のQOL(生活の質)も確実に低下します。だからこそ、介護者支援についても国として積極的に取り組んでいただきたいと、心から願っております。
もし、皆様の地域でも「男の介護教室」を開催してみたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。





















