NPO法人 どうぶつたちの病院 沖縄

NPO法人どうぶつたちの病院沖縄は2002年に始動した「ヤンバルクイナたちを守る獣医師の会」を前身として、2004年に琉球列島に生息する希少な野生動物を守る事を目的に設立された。特に絶滅寸前と言われた日本で唯一の無飛翔性の鳥類ヤンバルクイナの保護活動に注力し、ヤンバルクイナの生息地である沖縄島北部の森林地帯(やんばる地域)の住民や行政と協働して、絶滅要因であるマングースの防除対策やネコの適正飼育の推進活動を展開してきた。さらに、交通事故(ロードキル)等によって傷ついたヤンバルクイナの保護実績は、過去20年間で150羽を治療し、100羽のリハビリテーションを経て74羽が野生復帰を果たした。「ロードキル」を防ぐ対策として、安全運転の呼びかけや野生動物に優しい道路造り(野生動物専用のトンネルの設置や、落ちても這い上がりやすい側溝の設計など)の提言を行っている。さらに、絶滅回避のためにヤンバルクイナの飼育下繁殖にも成功し、現在、環境省の飼育下繁殖事業も担っている。官民一体となった保護活動でヤンバルクイナは回復に転じ、生息地である沖縄島北部の森林地帯は2021年世界自然遺産に登録された。同時に世界自然遺産に登録された西表島では、2000年当時ノラネコが著しく増加し、イリオモテヤマネコへの重篤な感染症伝搬のリスクが高まっていた。環境省、竹富町、九州地区の獣医師会連合会と協働して、飼い猫の不妊化や400頭を超えるノラネコの譲渡を進め、2022年にはノラネコゼロを達成し、イリオモテヤマネコへの感染症リスクを軽減する事に成功した。どうぶつたちの病院沖縄は「沖縄の希少野生動物の絶滅を未然に防ぐ」を合い言葉にペットの適正飼育を推進することで、公衆衛生の維持向上、動物の福祉への配慮、生態系保全の達成を目標としている。現在、南大東島をはじめ10の離島に動物医療を提供していく活動を展開している。
NPO法人どうぶつたちの病院沖縄は2001年に前身となる獣医師グループの結成を経て2004年、琉球列島に生息する固有の野生動物の保護を目的に法人が設立されました。
当時、「飛ベない鳥ヤンバルクイナ」は発見からわずか20年で国内で最も絶滅に瀕した鳥類となっていました。元々、肉食獣がいなかった沖縄島北部の森林地帯(やんばる)にマングースが侵入し、ペットであった猫が遺棄され、肉食動物に対抗する術をもたないヤンバルクイナは捕食され、絶滅の危機にさらされていたのです。
2005年頃にはヤンバルクイナの推定生息数は約700羽程度まで減少し、専門家は絶滅までおよそ15年という絶望的な予測を発表し、関係者を落胆させました。
そこから、私たちはヤンバルクイナを絶滅の淵から救い出し、未来につなぐため「出来ることを全てやる」を合い言葉に、活動を開始しました。環境省や沖縄県、地域住民や専門家が一丸となって活動を開始しました。私たちは森の中からマングースを探し出すマングース探索犬の育成、やんばる地域の森や集落で保護されたネコの避妊去勢手術を実施し、約1,000頭を北海道から沖縄までの多くのご家庭に迎え入れていただきました。
活動の成果でやんばるの森からマングースやノネコが減少し、ヤンバルクイナは人々の願いに応えるように回復していきました。
絶滅予測の年とされた2021年、ヤンバルクイナは絶滅を回避して復活を遂げ、やんばるの森は世界自然遺産に登録され、後世に引き継ぐための準備が整いました。
やんばると同時に世界自然遺産登録された西表島にはイリオモテヤマネコが生息しています。その生息数は約100頭、西表島は亜熱帯の大自然が残り、野生動物にとって何ら問題が無い様に思えます。ところが実際は、イリオモテヤマネコの交通事故が発生し、多い年には10件の死亡事故が発生したこともあります。1頭でも多く救命するために獣医師や動物看護師が常駐する体制を整えました。また、イリオモテヤマネコにイエネコから猫白血病ウイルス感染症等の悪性伝染病の伝播を防ぐため、環境省、竹富町、獣医師会と島民の皆さんと協働してイエネコ対策に乗り出し、全ての飼い猫の避妊去勢手術、予防接種、マイクロチップ、予防接種を完了し、約500頭の野良猫を保護、譲渡を行ない、西表島には野良猫がいない状況が生まれました。
ただひたすら、次世代に大切な沖縄の自然をつなぎたい思いで活動を続けてきましたが、この活動に光を当てていただいた社会貢献支援財団に心から感謝申し上げます