受賞者紹介

第56回 社会貢献者表彰
ひきや

NPO法人 光希屋(家)

(秋田県)
NPO法人 光希屋(家)代表 ロザリン・ヨン
代表 ロザリン・ヨン

マレーシア出身のロザリン・ヨン(Yong Kim Fong Roseline)さんが2012年に秋田県に設立した、ひきこもりの人たちの居場所となり自立支援を行うNPO法人。ロザリンさんは日本にひきこもりと自殺の多い現象に関心を持ち、疫学的観点から調査研究を行い、その関連要因や助けを求める行動を分析。居場所や地域社会との交流と自立支援のための方法を考案。日本で最も自殺率が高い秋田県へ移住し、任意団体「光希屋」を設立、2013年にひきこもりの自立支援の居場所となる「ふらっと」モデルを考案し社会福祉や医療の資源が乏しい地域でも取り入れやすいひきこもり自立支援モデルを実践する。「相談」という形ではなく、メンタルヘルスサポーターやピアサポーターが気軽に会話しながら利用者の心の内を引き出していく。近隣住民との交流機会を少しずつ増やしながら地域の偏見を減らし、自己受容を促し自己分析のスキルを身につけることで社会復帰を果たした人が多数いる。毎年約60名が利用している。同時に、社会医学に興味を持つ医学生を社会医学研修の一環として受け入れ、メンタルヘルスサポーターとゲードキーパーのための研修を行い、精神科に限らず、普通の医者になる人でも患者の気持ちを探るための一助となるよう指導している。

推薦者:NPO法人 蜘蛛の糸

ひきこもりの支援で一番難しいことは、何を支援しているのかがはっきり見えないこと。実は研究も同じ。何を研究しているのかがわからなくなる時がある。

ひきこもりの定義が曖昧で、学術、医療、現場で考えていることにそれぞれのずれがある。簡単にはずれを解決できないけど、本人と周囲の環境に継続的に関わることがひきこもりから一歩踏み出すきっかけになるのは間違いないと思う。私の研究活動は、ひきこもりの人と一緒に行動して、本人と家族は何について抵抗しているのか、すれ違うところは何なのか、居心地よいのは何なのか、考え続けてきた。

光希屋(家)の発想は同じ屋根の下にひきこもることができれば、自然に何かが起きるのではないか、自立する意味も含めてひきこもりの家と明るい漢字をつけた。義務感に挫折している人たちは、気兼ねなくふらっと立ち寄れるところであれば、気が合う人がいて居心地よいところであれば、その家が居場所になるでしょう、と「ふらっと」と名付けた。居場所に縦割り関係がなく、利用者がひきこもりしながら日替わり店長になり、当日のメニューも本人の個性にお任せ、楽しくやればいい。こうやって、少しずつ社会参加の成功と失敗を繰り返しながら体験していく。そして、人間関係を築く。

大仙市の地域には高齢者が多く若者が少ない。ひきこもりの若者が動きやすいために地域の偏見の目を緩めないといけない。偏見を緩めるにはお互いのことを知るしかない。その思いで、「ふらっと」の初めての活動は足湯プロジェクト。真冬の冷えで足が躓きやすいお年寄りが若者に足をもんでもらう、普段では接点のない人たちは少しずつ距離を縮めることができた。ひきこもりって何?不登校のことは知ってたけど、ひきこもりがいることはほとんどわからなかったとお年寄りの声。もともと無関心だった人がカフェを通してひきこもりのスタッフや利用者に好感を持つようになり、その人を理解しようと思い始めた。お互いに接するうちに、ひきこもりのままの自分が受け入れられて自信を得た若者、「助けられたのは私の方だ」と話してくれた地域の人々…。

2021年11月29日、光希屋(家)が社会貢献者に表彰されたことは、社会がひきこもりに対する偏見をさらに一歩減らした証だ。利用者たちにとって、一番励みになると思う。ひきこもりの人はネガティブな存在ではなく、出会いやきっかけがあれば人を幸せすることができる。がんばるぞ!!!

代表 ロザリン・ヨン

  • 赤い羽根募金に参加
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  • 青空コンサート
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  • 足湯プロジェクト
    足湯プロジェクト
  • 2019年の忘年会・感謝会にて。「ふらっと」の準備段階から活動を理解してくれたせいやさんと
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  • 9月10日は世界自殺予防デーです
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  • 2周年講演会
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