受賞者紹介

第56回 社会貢献者表彰
ふるかわ たくや

古川 琢也

(佐賀県)
古川 琢也

2020年8月18日午後3時頃、佐賀市八戸溝1丁目の踏切において、古川琢也さんが自転車で踏切を横断した直後、次の電車が近づき再び遮断機が下り始めた。隣で自転車を押して歩いていたはずの高齢女性の姿が見えないことに気づき振り返ると、遮断機の下りた踏切内で女性は立ち往生していた。踏切には警告音を鳴らしながら電車が近づいていたが、女性は動くことができないようだった。古川さんは自らの危険を顧みず遮断機内に入り女性と自転車を踏切の外へ救出。救出後3秒ほどで二人の前を電車が通過した。女性は左半身が不自由であり、遮断機が下りたことでパニックに陥ったとのことだった。古川さんは女性を救出後、名乗らずに立ち去ったが、女性は古川さんの制服を覚えており、高校を探し出して感謝の電話を入れたことで古川さんの功績は知られることとなった。後に佐賀県警察本部長から感謝状が授与され、佐賀県教育委員会からも表彰された。

推薦者:公益財団法人 警察協会

このたびは、社会貢献者表彰を賜りまして、誠にありがとうございました。

式典に参加し、受賞された方々の活動を拝聴していると、あらためて世の中には地域や国内、そして世界にわたり人の心に寄り添い様々な支援や取り組みをなされている方がいらっしゃると知り、驚くとともに大変感銘を受けました。その方々と一緒の場にいることが大変有難く私にとって本当に貴重な財産となりました。

それは、2020年8月18日のことでした。その日は夏休み期間中であったものの、高校3年生の私は10月の就職試験に向けた事前準備のため朝から学校に行っていました。

準備活動を終え友人と昼食を食べ、その後別れていつもの通学路を自転車をこいで帰っていました。通学路には途中踏切があり、ちょうど遮断機が降りているところでした。私は自転車を押した小柄の高齢の女性と並んで遮断機が上がるのを待っていました。夏の暑い午後3時頃です。

程なく遮断機が上がり、私は自転車をこいで踏切を渡り終えました。その後、再び警報音が鳴り始めましたが、先程隣で一緒に待っていた高齢の女性が見当たらないことに気付き、後ろを振り返ると既に遮断機が降りており、女性が踏切内で立ちすくんでいました。私は「大丈夫ですか?」と声を掛けましたが、女性は声が出せず無反応だったため、その瞬間『このままだとヤバイ!』と思い自分の自転車を停めて助けに向かいました。無論、警報機を押すことを考えましたが、それでは間に合わないと思い、まず女性が押していた自転車を遮断機の下をくぐらせて外に出し、続いて女性を助け出そうとした時、電車が警笛音を鳴らしながら近づいてきました。しかし、自分でも驚く程冷静な行動で、女性の後ろ側に立ち、出る方向を左手で指し示しながら落ち着いて踏切の外に救出することが出来ました。その3秒後に電車が勢いよく私達の目の前を通り過ぎ、本当に間一髪で尊い命を救い、また重大な事故を防ぐことが出来、安堵しました。

電車が通り過ぎた後、自転車のカゴからこぼれ落ちた荷物を拾い女性に渡し体が無事であることを目視で確認し、「じゃあ、僕急いでるんで。」と告げその場を立ち去りました。

夏休みが終わり9月の始業式の日、朝のホームルームで担任の先生から「女性の方からこの学校の生徒に踏切内で助けられたがお礼を言いそびれた。との連絡があったが心当たりがある者はいるか。」と尋ねられ、内容を聞いてみるとあの時私が助けた高齢女性だと思い手を挙げた。私は名前を告げていませんでしたが、特色ある学校の制服で私が通う学校が分かり連絡をされたようです。

後で分かったことですが、女性は左半身が不自由で遮断機が降りたことでパニックに陥ったとのことで、さぞ怖かっただろうなと思いました。

この救出については、後に佐賀県警察本部長から感謝状をいただき、また、佐賀県教育委員会からも表彰をいただきました。私は目の前にある命を救い出すことに一生懸命で、まさかこんなに表彰していただけるとは夢にも思いませんでした。今後も命の尊さを思い噛み締めて、命を救い、守り、繋げていくべく一日一日を丁寧に送りたいと思います。

 

  • 感謝状 佐賀県警本部長
    感謝状 佐賀県警本部長
  • 表彰状 佐賀県教育委員会
    表彰状 佐賀県教育委員会
  • 救出現場の踏切
    救出現場の踏切
  • 救出現場の踏切
    救出現場の踏切
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