受賞者紹介

第46回 社会貢献者表彰

人命救助の功績

はらだ たかこ

原田 貴子

(北海道)
原田 貴子

平成27年4月10日、午前11時40分頃、北海道函館市で、同市在住の親子3人(父23歳、長女3歳、長男1歳)が、男(43歳)の運転する軽乗用車に「幸せそうな親子が憎い」と通り魔的犯行で跳ねられたうえ、車から降りて来た男に殴られた事件で、付近の保育園で勤務中に物音で事件に気付き、様子を見に行った原田さんは、女児を殴っている犯人に立ち向かい、女児を抱えて走り園内の同僚に託した後、園内の子どもたちにも危険が及ぶと考え、同僚にドアを閉めて鍵をかけるよう指示し、自らは外に残り犯人の執拗な攻撃を受けた。通りかかった男性が原田さんを殴り続けている犯人にやめろと叫ぶと犯人は逃走したが、その後、道警察に逮捕された。原田さんは保育士としての長い経験と危機管理意識の高さから、身を挺して園児や救出した女児、倒れた父子への攻撃を防いだ。

推薦者:公益財団法人 社会貢献支援財団
事件現場 親子が倒れていた場所
事件現場
親子が倒れていた場所

私は小さな保育園に勤務しています。
その日、いつもどおり園児に給食を食べさせていると、外でドンッという音が聞こえました。不思議に思って窓から外を見ると、フロントガラスにひびが入った軽乗用車が歩道に止まっていました。その車の前には3人が倒れていました。交通事故だとわかり救急車を呼ぶよう他の保育士に指示をして外へ出ました。倒れていたのは子ども2人とお父さん。車に運転手は乗っていなく、倒れている男児は、顔に擦り傷があり呼吸はしていました。
お父さんは横向きに倒れていて顔面蒼白で意識がないように見えました。女児は、うつ伏せになり泣いていました。保育園に戻り3人の様子を伝え、再度救急車を呼ぶようにお願いし、また外へ出ました。お父さんと男児は骨折している可能性があるため救急車が来るまでそのままにしておこうと判断し、大きな傷もなく意識がはっきりしていた女児を保育園で休ませてあげようと思い、抱きかかえようとしたとき、突然犯人が「このやろう」と女児の背中を殴り始めました。無抵抗の子ども、しかも怪我をしているかもしれないのに暴力を振るうなんて・・・「やめてください」と何度も言って暴力を止めようとしていると、犯人が女児から少し離れた瞬間に女児を抱きかかえて保育園へ連れて行きました。犯人は女児が何らかの事故の原因になり怒っているのだろう。だから女児を追いかけてくるのだと思いました。女児と私が保育園へ入ると、窓ガラスを割られたり、中にいる園児にまで危害を加えるかもしれないと思い、女児だけを保育園の中に入れ、施錠するよう指示して戸を閉めました。犯人は私を標的に暴力を振るってきました。このときは、犯人を保育園の中に入れるわけにはいかない。私が子ども達を守るという気持ちで暴力に耐えました。偶然、現場に居合わせた勇気ある男性が私から犯人を引き離してくれました。犯人が逃げていくのを確認し、保育園の中へ入りました。警察が来るまで交通事故だと思っていましたが、殺人未遂事件で通り魔的犯行と聞き恐ろしくなりました。今思えば、保育園の先生たちとの連携と現場にいた人達のおかげで、事故にあった3人が助かったのだと思います。

この度は、社会貢献支援財団様からの推薦を受け、受賞式に出席させていただきましたが、受賞された方々の活躍はどれも素晴らしく、改めて人間の温かさと勇気を感じることができました。このような場に一緒に立たせていただき、大変光栄で感謝の気持ちでいっぱいです。また、受賞された方々などから、たくさん声をかけていただきとても嬉しかったです。

この度の受賞で私も人間として素敵な心を学ばせていただきました。
ありがとうございました。

  • 函館新聞2015年4月11日
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  • 北海道新聞
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  • 函館新聞
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