受賞者紹介

平成21年度 社会貢献者表彰

人命救助の功績

むかい とよみち

向井 豊道

(60 歳/山口県岩国市)
向井 豊道
平成 20 年 4 月 4 日午後 4 時 25 分頃、岩国市の自宅で近所の家から黒煙が噴出しているのを発見した。すぐに役場消防に通報した後、その家へ駆けつけ目が不自由で歩行が困難な女性(79 歳)を背負い、家の外へ移動させ、再び家の中に飛び込み、耳の不自由な男性(93 歳)を救出した後、延焼防止のため台所にあったガスボンベ 2 本を搬出した。
推薦者/全国消防長会

受賞の言葉

この度はこのような名誉ある賞をいただき光栄に思います。その日を振り返れば、周囲がその人を助ける環境を作り、私は長年の身についた咄嗟の行動をとっただけのことで、立派なことをしたとは思っていませんでしたが、賞を受け咄嗟の行動のすばらしさに感激しております。今後は人の為に恩返しができるよう努力して行きたいと思います。

火災現場跡地

平成 20 年 3 月に、長年勤めた岩国市の職員とその傍ら所属する消防団員を退職した。

退職間もない当日の夕方、山の中腹にある我が家から、眼下の住宅に出火間もない煙が立ち昇るのを犬の散歩から帰宅直後確認し、直ちに火災通報を行うと共に住宅に駆けつけた。

壁から炎が出ていたが、火事に気付いていない。夫婦に大声で「火事だ」と声をかけたが、夫(93)は耳が遠く、隣室にいた妻(79)は目が不自由で二人に何度声をかけてもテレビに夢中の様子で全く気がつかない。

消火をと火元の風呂場を見に行くと、すでに壁から室内に広く炎が移り、電気も停電しており水もでない。直ちに妻を背負い安全な場所に運び出し動かないようにと声をかけ、引き返し夫の手を引いて連れ出した。

大事なものの所在を聞いたが、耳が不自由な夫はおろおろするばかりで何も聞き出すことはできず、20kg のプロパンガスボンベ 2 本を家から搬出するのが精一杯であった。

まもなく到着した消火の開始と畑で抱き合う二人を見て、ようやく安堵した。家は全焼したが、隣家には延焼せずにすんだ。

当日は岩国地区消防組合の広報車から乾燥注意報が出されており、火のもとには十分気をつけるようにと繰り返し広報活動をしていた。

火災広報・退職直後・犬の散歩等があの煙は?と注意を喚起させ、火災の早期発見に結びつき救助できたが、当然のことをしただけで無事でよかったと本当に思う。

寺の住職でもあり、救出した夫婦との付き合いもあり、また近所にどんな人が住んでいるのかは把握しており、今後も地域には恩返しをしていきたい。

現場から見える向井邸
山火事にならなくて良かった

Mr. Toyomichi Mukai

(60 years old, Yamaguchi, Japan)
At 4:25 p.m. on April 4, 2008 Mr. Mukai noticed smoke coming from a house near his residence. He called a local fire-fighting team then entered the smoke-filled house and rescued an elderly couple (93 and 78 years old) with failing vision and hearing. He then removed two gas canisters from the kitchen in order to prevent the fire from spreading.
Recommended by the Fire Chiefs' Association of Japan