受賞者紹介

第59回 社会貢献者表彰
えぬぴーおーほうじんきものわふく

NPO法人 きもの笑福

(東京都)
NPO法人 きもの笑福 理事長 鎌田弘美
理事長 鎌田 弘美

着物の着付けの講師だった鎌田弘美さんは、2014年、地域の中学校の依頼で浴衣講座を行った際、クラスに児童養護施設の子どもたちが多いことを知った。さらに活動を進める中で、経済的な理由や複雑な家庭環境などで、子どもたちが、日本の伝統文化である着物に触れることなく、大人になるケースを目の当たりにし、児童養護施設、母子生活支援施設、障がい者施設を中心に、着付け学校の仲間とともに、七五三・成人式の振袖支援プロジェクトをはじめた。着物の貸し出しに始まり、着付け、ヘアメイク、写真撮影、アルバム贈呈まですべて無償で行う。こうした地道な活動は口コミや紹介で広がり、全国どこでも訪問する。一生に一度しかない晴れの舞台を、心をこめて祝うことで、子どもたち、女性たちの自己肯定感を高め、物事に挑戦する意欲を育んでいる。

推薦者:三角 寧々

この度は、名誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。

人権配慮の観点からSNS発信や広告を一切行わないため、私たちの活動のほとんどはご紹介による依頼によって始まります。令和3年はのべ84人、令和4年は100人を超える子供たちの支援をしました。

入所の9割が虐待やDVである児童養護施設ですが、施設に入れる子供たちは全体の3%である上、虐待は年々増加傾向にあります。さらに入所できても約8割の子供たちが精神的な課題を抱えており、医療に頼らなければならない現状があります。また母子生活支援施設では、10代で妊娠出産をしており自分の成人式どころではなかったとの声が多く聞かれます。こうした困難を抱える状況下で、かつセキュリティの厳しい施設内での活動は緊張の連続です。しかし、どのような方も「祝われることは平等であるべきである」と私たちは考えています。支援当日は施設職員の方々と共にできるだけ温かい雰囲気づくりを心掛け、晴れの日を心から楽しんでいただけるようスタッフ一同努めております。また母子生活支援施設の七五三のお祝いにはお子様とご一緒にお母様も振袖を着て写真撮影をしております。そばで見守っている職員の皆様が、嬉しさのあまり涙を流すことも少なくありません。

「七五三・成人振袖支援プロジェクト」は、自己肯定感を育むプロジェクトです。お贈りしたアルバムは形として残り、いつでも何度も見て笑顔を生みます。色あせることなく思い出とともに、生きる力と希望を与えてくれます。情報化が進む世の中で、私たちの活動は時代に逆行しているように映るかもしれません。しかし、地域や家族の結びつきが希薄化する中で、自分の存在価値や周囲の人を信じてもいいかもしれないという希望を生み、心と心のつながりを作る活動だと自負しています。

今回懇談会・表彰式と、たくさんの素晴らしい活動発表を聞く機会をいただきました。自分たちと近い団体様との交流は大変有意な時間となりました。このような貴重な機会は必ずや子供たちの未来に活かされると確信しております。

着物は贅沢品であるとして、なかなか活動が理解されないことが多い中で、私たちのような表に出ることができない草の根の活動の未来を信じてくださり、光を当ててくださった社会貢献支援財団の安倍昭恵会長と関係の皆様に深く感謝申し上げます。これからも皆様のお力添えをいただければ幸いです。

  • 七歳のヘアメイク
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  • バット博士記念ホームお礼状
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