受賞者紹介

第54回 社会貢献者表彰
あいしーてぃーさぽーとふくおか

ICTサポート福岡

(福岡県)
ICTサポート福岡 代表 八久保 弘之
代表 八久保 弘之

①2004年から一部の会員が福岡県で、障害者のパソコン及びインターネットの利用の支援活動を通して、情報・通信のバリアーフリーを実現し、社会参加と自立の促進に寄与すべく活動 ②2010年の著作権法改正を機に、PC技術の必要なマルチメディアDAISY図書の編集と普及活動に置くボランティアグループとして登録 ③マルチメディアDAISY図書は、全盲・弱視、LD、ADHD、自閉症などの発達障害、寝たきり、上肢障害など 様々な理由で紙の図書が読めない人に適応 ④特別支援学級で、発達障害、学習障害、ディスレクシア(文字を認識できない障害)の生徒たちも受け入れ ⑤マルチメディアDAISYは、画像、音声、テキストが一体化されたデジタル図書で、画像が表示されるとともに、読み上げ中のテキスト部分がハイライト ⑥読み上げは合成音声ではなく、質の高い朗読座「おおむた」のボランティアに依頼 ⑦今までは再生するのにPCを使うことが多かったが、最近は「VOD5」や「いーリーダー」という再生ソフトが出てきたので、タブレットやスマートフォンも使用される ⑧制作は、絵本を解体してスキャン 文字をテキストからHTML化 画像を編集し適度なサイズに 文字に合わせてナレーションの挿入 ビルトブック後に iPadにインストール ⑨資金が乏しいボランティア団体としては、制作ソフトはほとんどがフリーソフト 使い易いソフトは高価で手が出ないが、最近出たPLEXTALK Producerというのを使っている ⑩会員が集まるのは月に2回だけで、制作作業の他、情報交換など行う 自宅で作業することが多い ⑪「ざんねんないきもの事典」の制作には12人がかりで1年もかかった そんな中、これまでに完成させた絵本は約150冊 ⑫障害者への窓口であった公立図書館や特別支援学校(級)などに働きかけてきたが、遅々として普及が進まない ⑬その原因の一つに、学校のPCなどにソフトのインストールを禁じていることがある そのため絵本を内蔵したiPadの貸し付けも行ってきた ⑭2018年改正著作権法の下、直接身障者にそのニーズに合ったマルチメディアDAISY図書の制作を続け、絵本を内蔵したiPadの貸し付けも行っていく ⑮マルチメディアDAISY図書を制作する無償ボランティア団体として、これからも活動を続ける。

推薦者:社会福祉法人 福岡市社会福祉協議会ボランティアセンター

この度、社会貢献者として表彰していただき、心から感謝申し上げます。あらためて私たちの活動の経緯と内容、それに「マルチメディアDAISY」(以下mDAISYと略称)について、簡単に述べさせていただきます。

「ICTサポート福岡」はパソコンボランティアを目指す有志によって、平成22年4月に結成されました。その年に改正著作権法が施行され、それまで障害者の図書利用として音訳と点訳図書しか許されなかったのが、テキストに画像や音声が入った電子図書即ちmDAISY図書が利用できるようになりました。mDAISY化作業は書籍や絵本のテキスト化、画像処理、サウンド処理、HTMLプログラミングなどから成ります。なお、読み上げは人工音声ではなく、「朗読座おおむた」の皆さんの協力による生の声です。前代表の故根本實氏から技術指導を受けながら、子供に人気がある絵本をmDAISY化作業することによって、完成した電子絵本(mDAISY図書)(以下電子絵本と略称)を、地域の障害児たちへ普及を図ることを目標に、活動を続けてきました。現在のメンバー数は約15名で、毎月2回定例研修会を開いています。

mDAISY図書とすることによって、紙の図書では出来ないことが可能となり、(*註)その結果、全盲だけでなく、弱視も含め、LD、ADHD、自閉症などの発達障害、および眼球運動の障害、上肢障害や病弱など、さまざまな理由で紙の図書が読めない人にとって効果があることが、国際的に認められています。私たちはこれまでの約10年間で、約150冊の電子絵本を制作してきました。

また、数多くの公立図書館や特別支援学校(級)を訪問し、CD、iPad、パソコン等に格納した電子絵本を再生実演しながら、電子絵本を紹介し、電子絵本入りのiPad(複数台)を数ヶ月単位で貸し出して利用していただいていますが、組織として正式に取り上げてもらうまでには至っていません。その原因として、まず認知度が低いこと、それに教科書以外の機器購入予算がない、再生ソフトの購入が出来ない、マンパワーがないなどがあります。活用例としては、僅か30冊余りですが日本障害者リハビリテーション協会に提供しています。

2018年の改正著作権法改正(および関連施行令・施行規則)により、「ICTサポート福岡」は2020年4月1日にSARTRAS(サートラス)に登録をし、直接障害児に接して、各個人のニーズに合った電子絵本を提供出来るようになりました。

この度、地方の小さなグループの地味な活動に光を当てていただいたことは、この10年の間、前代表の亡き後も地道に活動を続けてきたことへの評価であると思い、これからの更なる活動の励みとなります。副賞では通常の活動資金では入手し難いiPadやmDAISY化ソフトの購入に当てさせていただきたいと思います。

新型コロナウイルス感染拡大で、障害児への広報活動は制約を諸に受けていますが、私たちは自宅で制作活動を続けながら、同時にZoomを使ってオンラインで制作活動の補完を試みています。昨今はさらに感染者が東京をはじめ、地元福岡でも増え続けており、誠に残念ながら晴れの表彰式参列をご辞退せざるを得なくなりましたことを、関係者の皆様に心よりお詫び申し上げます。


(*註)紙の図書では出来なくて、mDAISY図書で出来ることの例
● 読んでいる場所がハイライト表示されるので、読みに集中できる。
● 文字の色、ハイライトの色、背景色・コントラストが変更できる。
● 読み飛ばしができる。
● 同じ場所を何度でも繰り返して読める。
● 文字の拡大が容易。拡大してもリフローにより、テキストはスクリーンから外れない。
● 読み上げ速度の変更が容易で、音程が変わらない。

代表 八久保 弘之

  • 音声をマルチメディアDAISYファイルに挿入
    音声をマルチメディアDAISYファイルに挿入
  • 各自でマルチメディアDAISY図書の編集作業
    各自でマルチメディアDAISY図書の編集作業
  • 研修会風景
    研修会風景
  • マルチメディアDAISY図書CD版から貸出用iPadへデータを転写
    マルチメディアDAISY図書CD版から貸出用iPadへデータを転写
  • マルチメディアDAISY図書作成ソフトPLEXTALK Producer講習会
    マルチメディアDAISY図書作成ソフトPLEXTALK Producer講習会
受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」