受賞者紹介

第53回 社会貢献者表彰
やぎ としみ

八木 俊實

(鳥取県)
八木 俊實

勤務していた会社が鳥取市内の精神科病院の「通院患者リハビリテーション事業」を受託していたことから、八木さんは担当者として病院で入院加療中の人や退院患者との関わりが始まった。病院に出入りしながら、ちょっとしたことで傷ついたりストレスを抱えてしまう患者さんたちへの理解を深め、そうした精神障がいのある方々の社会復帰について真摯に考えて相談にのったり、勤務する会社の職員教育にも取り組むなどしていた。
退職後、画家として個展や絵画教室を開く一方で、2003年から鳥取市の渡辺病院が精神科の作業療法の一環として始めた絵画クラブの講師として、週1回15年以上に亘ってボランティアで入院患者の絵画指導を行っている。また、鳥取市が運営する身体・知的障がい者のサロン「さわやかサロン」でも2004年から現在まで同様に絵画講師を務め、常に優しく相手を引き立て、上手下手ではなく、心の内を絵で表現することや描くことの楽しさを知ってもらい、病状の安定に繋がるよう願って接している。
精神障がい者のみならず、市内の小学校などでも出前の絵画講座を開き、課外へ出てなるべく実際の風景や被写体を目の前にして描くようにしている。なにより心も一緒に育ていってくれることを願って指導している。

推薦者:日本精神科病院協会 鳥取県支部 支部長 渡辺 憲

このたび、第53回社会貢献者表彰という栄誉ある賞をいただきました。長年、世間には見えない私のしてきた目立たない行為に、スポットライトを当てていただき、光輝くステージへと導きだされました。

これまでも多くの方々を表彰され、社会貢献支援をされた財団はもちろん、今回、私を推薦していただいた方、選んでいただいた選考委員の方々に対し、誠にありがたく心より御礼申し上げます。

東京の一流ホテル、帝国ホテル孔雀の間という、華やかな会場でのすばらしい表彰式と祝賀会は、この齢になっても初めて味わうものでした。久しぶりに上京した私の心に奥深くしっかりと刻まれました。

振り返れば、幼少の頃から好きだった絵画、30才から描きだした油絵が、趣味の枠を乗り越え独学ながら描いてきたことで、65才で会社を退職した直後、絵画指導者への道へとつながり、その後は精一杯努力してまいりました。同じ頃、鳥取市の精神科病院で作業療法の一環としての絵画クラブの指導講師を引き受けて現在まで続いております。また、鳥取市の中央保健センター「さわやかサロン」でも、在宅で障害のある方々を絵画講師として支え接しています。10年間続けている小学生児童たちへの出前講座も大切だと思っております。少しでも世の中に役立ち、社会に役に立つ人間にという思い、私の生甲斐であり喜びでもあります。

話は変わりますが、鳥取という地方で、私の洋画家として描くテーマは「自然の風景」です。今年から2ヶ所の精神科病院のロビーに「とっとりの四季」をテーマで、季節ごとに風景を描いた油彩画を飾っていますが、これも入院されている患者さんが少しでも心の癒しになればと、また、生きていく力、社会復帰するという意欲の心が育まれればと、そんな思いで行っております。

今回の社会貢献者表彰受賞が、ローカル紙に掲載されたこともあり、友人、知人から温かい祝意のお手紙、メールを沢山いただきました。その中に「誠実な八木先生に社会貢献者表彰は最もふさわしい表彰です。本当に、本当にうれしい、うれしい気持ちでいっぱいになりました。」と、この言葉に涙がこぼれるほどうれしく、感動しました。

現在、82才ですが、今まで私にご指導、ご支援、ご援助いただい方々に感謝しつつ、これからもこの賞に恥じることのないように、健康に留意して、今後も、精神障害のある方々に絵画を通して支援して行きたいと思います。本当にありがとうございました。

  • 絵画クラブで指導をしている病院内に展示されている作品
    絵画クラブで指導をしている病院内に展示されている作品
  • 絵画クラブで指導をしている病院内に展示されている作品
    絵画クラブで指導をしている病院内に展示されている作品
  • 絵画クラブで指導をしている病院内の展示コーナー
    絵画クラブで指導をしている病院内の展示コーナー
  • 八木さんが院内ポロビーに四季ごとに入れ替え展示している「とっとりの風景」
    八木さんが院内ポロビーに四季ごとに入れ替え展示している「とっとりの風景」
  • 病院内に展示されている八木さんの油彩作品
    病院内に展示されている八木さんの油彩作品
受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」