受賞者紹介

第55回 社会貢献者表彰
こばやかわ あきこ

小早川 明子

(東京都)
小早川 明子

「ストーカー」という概念さえ一般的でなかった頃、自身が5年にも及ぶストーカー被害に遭った経験から、1999年にストーカー対策活動を開始。2003年には「NPOヒューマニティ」を設立してストーカー行為の根本的な解決のため、加害者を「無害化」するためのカウンセリングや治療へ繋げる活動を開始した。年間200~400件の相談を受け、月に2、3件は直接加害者に会いに行く。これまでに600人以上の加害者と対面している。殺人未遂や傷害事件といった凶悪な犯罪を起こした後のストーカー加害者とも多く対峙。自身の身を危険に晒しながら、被害者の身を守ることを最優先し、数多くの事件を未然に防ぎ、多くの命を守ってきた。
ストーカーの多くは相手への過剰な関心から接近を渇望し、接近できなければ禁断症状が出るような「特定の他者への関心が固着」し、「行動制御」が難しくなっている人たち。2013年に下総精神医療センターの平井慎二医師が開発した「条件反射制御法」がストーカーの治療に有効であることを知った小早川さんは20人以上の加害者を治療に繋げ、その殆どを相手へのとらわれから脱却させることができた。

推薦者:A's Salonハラスメントカウンセリング 後藤 稚菜

ストーカーという言葉が知られ始めた1990年代の終盤、私は美術品の輸入会社を経営していました。当時の私は、ある人間から「お前は会社を経営する資格はない」「経営を止めろ」と、日々、責められていました。会社を立ち上げる前、適当に「一緒に仕事しよう」と言ってしまい、会社を始めると「役員にしろ」と要求されたのです。「適正がない」と断ると、「約束を守れ」「嘘つき」という電話が途切れず、誹謗がファックスで取引先に流れ、無視すればするほどエスカレートしました。一円にもならないことに全エネルギーをかけて関わってくる。こちらがどんなに苦しんでも、本人はまっとうな行為だと信じている。これがストーカーなのではないかと思いました。

ある日、「明日、火をつけてやる」と電話がかかり、私はすがる思いで警察署の防犯課を訪ねました。が、まだストーカー規制法はなく、警官から「火をつけてられてから来なさい」と言われ、帰り道、民間に頼ろう、警備会社に頼もうと思いました。ボディーガードが付いて、もう殺されないと思ったときの安堵感。ストーカーはやってきましたが、捨て台詞を吐き、背中を見せて帰っていきました。この日を境に、私の意識に人を虐めることは許さない、人の人生の邪魔をすることは許さない、私と同じ被害に遭っている人を助けたい、という思いが芽生えたのです。カウンセリングの世界では禁忌、異端だと言われながら被害者と加害者の双方と会ってきました。こうして20年がたち、まさかと思われる出来事が起きました。社会貢献者として表彰されるとは!

 ストーカーとは、特定の相手に関心が固着し、接近欲求で行動を支配される人間です。欲求を正当化するため思考はゆがみ、「相手に責任がある」「相手も望んでいる」などと考えます。警告やカウンセリングによって8割のストーカーは考えを改めストーキングを止めますが、接近欲求が強すぎるストーカーはやめられません。水を飲みたいという欲求に譬えるなら、我慢できないほどの渇望感に喘ぐストーカーです。絶対に飲めないとわかった時、悶絶して水ガメを壊しにかかるように、相手から完全に拒否されたたら殺意を抱きます。こういう危険なストーカーの欲求を低減させる「治療」と巡り合いたいと思いながら、私は治らないままのストーカーたちを引き連れ、さまよっていました。

そこに2013年の冬、「条件反射制御法」の開発者、平井愼二医師から「治しますよ」とメールをもらいました。この画期的な治療と巡り合えて、私は活動を継続できました。今回の表彰は真っ先に平井医師に報告しました。安倍会長にも関心を持っていただき、平井医師とお会い頂いたことは、受賞に並んで嬉しいことでした。

私は最終的には、被害者はもちろんのこと、ストーカーにもストーキングを止め幸せを感じられるようになってほしいと思っています。幸せを感じるとは、難しいことのようですが、端的に言えば、生き生きと、喜びを感じられることに尽きるのではないでしょうか。今回の受賞の喜びを糧に、今後も生き生きと活動していく所存です。ありがとうございました。

  • 2019年国連アジア極東犯罪防止研究所にて講義
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