受賞者紹介

平成12年度 社会貢献者表彰

第二部門/多年にわたる功労

はらだ あきこ

原田 アキ子

(昭14.11.16生 熊本県熊本市)
昭和52年以来、熊本県内の待労院診療所において、親きょうだい同様の親身さでハンセン病患者の療養に、生活の向上に、家族や一般社会との懸け橋となって、献身的に尽くされている。
推薦者:(財)藤楓協会

昭和52年、待労院に勤務することになった。ハンセン病患者との初めての出会いであった。「同じ人間です。」とのフランス人看護婦のことば。最初から皆に受け入れてもらったことが今でも印象に残っている。

以下、回想風に功績を記す。

入所者ひとりひとりが自分のことは自分でし、働き、助け合う、大きな家族のような生活がそこにあった。それまでの病院、診療所等の勤務とは違い、「母として、姉妹として、家族として、友として、」・・・、看護婦としての大きな転換の時であり、新しい章の一頁が開かれた。

30余名の入所者に対し総員3名の看護婦、文字通りフル回転の毎日であった。「よく走っていたね」と、当時を知る医師はいまだに語る。忙しかったけれど、仕事上の苦しみは気にならなかった。衛生材料も洗って再利用しなければならず、不足のためのトラブルも少なくなかった。寝具類は仕立て直して繰り返し使用、食べ物も作業として野菜作り、山菜採り、貝拾いと、あらゆる手段を講じ補った。貧しかったが、生きていく上で何が大切かを教えられ、自分の子どもたちにも伝えられたと思う。

代筆を頼まれ、その人の気持ちになって、その人に成り代わって手紙を書くとき、自分も相手を信頼し、相手も自分を信頼してくれる関係を感じる。いつの頃からか、入所者が自分の家族のことや、昔の家庭でのこと、結婚のことなども話すようになった。社会も変わり、長いトンネルを抜け出し、明かりが見えてきた喜びを感じる。

 「感謝するばかり、すべてが順調だった。」と語るが、当時のハンセン病に対する社会の目、看護婦の定員を集めるのさえ困難だった待労院の歴史がある。入所者一人一人に明るく献身的に接する彼女の姿には、常に入所者の小さな灯としてすごした23年、共に歩みつづけた看護婦としての喜びがある。