受賞者紹介

平成11年度 社会貢献者表彰

第二部門/多年にわたる功労

きむ よんそん

金 龍成

(大正 7. 3.20生・大韓民国慶尚北道慶州市)
韓国における福祉問題の第一人者として活躍するとともに、多年にわたり慶州市で在韓日本人妻を保護する施設「慶州ナザレ園」を運営、行き場のない高齢者の支援を献身的に続けられている。
推薦者:事務局

昭和25年の朝鮮動乱による混乱に伴い、会寧(現・朝鮮民主主義人民共和国)から韓国(大韓民国)に南下、慶尚南道の慶州市で次々と社会福祉事業を手がけ、韓国における福祉問題の第一人者として活躍している。

同47年、茨城県瓜連町で総合福祉施設を運営する菊池牧師の、韓国における日本人妻の保護施設創設に全面的に協力、社会福祉法人「帰国者寮ナザレ園」を開設した。7年後氏は、同牧師を継いで同園の理事長となり、孤児院、養老院とあわせ日本人妻帰国者寮をも運営することとなった。

同園の開設当時、韓国内では反日感情が強く様々な非難を浴びたが、永住帰国者の支援、行き場のない日本人妻の駆け込み寺となった同園の運営に、多年献身的に尽力している。

帰国者寮は、昭和44年在釜山日本国総領事館が在韓日本人の永住帰国者と家族のために、帰国援助に乗り出した後、種々の事情で援助の枠から取り残された人々の世話を受け持つ役割を担っていた。延べ約30名を帰国させ、間接的な援助も含めると百数十名の日本への帰国を手助けした。

現在も92歳から72歳までの25名が暮らしているが、身元引受人はなく帰国の意思もない人々であり、近年では在韓日本人妻の養老施設的な性格を帯びている。これまでに200名以上がナザレ園で過ごし、147名が日本に永住帰国、48名が同園で亡くなっている。

寝たきりの韓国人の夫を抱えて将来を悲観、一家心中を図り服役中の日本人妻との出会いが、「韓国に渡った日本人妻たちの居場所を作ろう」と決意させた。

氏は『はるばる海を越えてきてくれた人たちです。せめてこの妻たち一代だけでも手厚くもてなし、孤老の日本人妻たちに安らぎの場を与えたいのです。』と語る。

園内には36名の遺骨が引き取り手もなく眠っている。京都の知人から建設費の寄付を得て、平成11年12月には日本海を望む市内甘浦の高台に、石造りの納骨堂を完成させた。

石碑には、日本語で「死んだら韓国の土になります。けれど魂は日本に帰ります」と刻まれている。